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オープン標準「RISC-V」はチップ業界の勢力図を塗り替えるか?
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These simple design rules could turn the chip industry on its head

オープン標準「RISC-V」はチップ業界の勢力図を塗り替えるか?

オープン標準の命令セット・アーキテクチャである「RISC-V」が近年、人気を集めつつある。RISC-Vはチップ業界の勢力図を一変させることになるのだろうか。 by Sophia Chen2023.01.26

Python(パイソン)、Java、C++、R——。コンピューターが発明されて以来70年あまり。この間、人類はトランジスターに命令を下すため、英単語と数学の記号の組み合わせたさまざまなプログラミング言語を生み出してきた。

だが、ノートPCの中央処理装置(CPU)に入っているシリコン製スイッチは、「for」という言葉や「=」という記号を本来理解しているわけではない。例えばPythonのプログラムをチップに実行させるには、ソフトウェアがそれらの単語や記号を翻訳して、チップが理解できる命令に書き換えなくてはならない。

エンジニアは具体的な2進数列を指定し、ハードウェアに特定の動作をさせる。例えば、「100000」という2進数列ならチップに2つの数字を加算するように命じ、「100100」という2進数列ならあるデータの複製を命じる、といった具合だ。このような2進数列がチップの基本的な語彙を形成しており、これらは「命令セット」と呼ばれている。

チップ業界は長年、それぞれのメーカーが独自に開発したさまざまな命令セットに依存してきた。現在、市場を支配しているのは、インテルとAMDが採用している「x86」と、アーム(Arm)の「Arm」である。他の企業はこのような命令セットのライセンスを取得する必要があるが、1つの設計だけでも数百万ドルもかかることがある。また、x86とArmのチップでは使用される言語が異なるため、ソフトウェア開発者はそれぞれの命令セットに合わせて別バージョンを作成しなくてはならない。

しかし最近、世界各地のハードウェア企業やソフトウェア企業が、「RISC-V」という自由に利用できる命令セットに群がり始めている。この動きには、チップ業界を根本的に変える可能性がある。RISC-Vを支持する勢力は、RISC-Vが小さな企業や新進の起業家を高額なライセンス料から解放し、チップ設計をより使いやすくすると主張している。

「イヤホンからクラウド・サーバーに至るまで、RISC-Vをベースとしたコアを搭載した機器がすでに無数に存在します」。RISC-Vを推進する非営利団体RISC-Vインターナショナル(RISC-V International)のマーク・ヒメルスタインCTO(最高技術責任者)はそう語る。

2022年2月、インテル自身も、他の優先課題と並行してRISC-Vのエコシステムを開発するために10億ドルを投じると表明した。ヒメルスタインCTOは、RISC-Vチップが個人用のコンピューターで広く使用されるようになるには数年かかると予想している。一方で、RISC-Vチップを搭載した初のノートPC「Roma」は2022年6月に予約受付が始まっている。Romaはエクスカリバイト(Xcalibyte)とディープコンピューティング(DeepComputing)が共同で開発したものだ。

RISC-Vとは

RISC-V(「リスク・ファイブ」と読む)は、コンピューター・チップに向けた設計標準群のようなものと考えればい …

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