KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
ジェフリー・ヒントンがグーグルを退社
Linda Nylind / eyevine via Redux
Deep learning pioneer Geoffrey Hinton quits Google

ジェフリー・ヒントンがグーグルを退社

「深層学習の父」と呼ばれるジェフリー・ヒントンがグーグルを退社した。 by Will Douglas Heaven2023.05.03

グーグルでエンジニアリング・フェローを務めていたジェフリー・ヒントンが、10年間在籍した同社を退職した。ニューヨーク・タイムズ紙が5月1日付けで報じた。ヒントンは深層学習のパイオニアで、現代の人工知能(AI)の中核で使われている重要な技法を開発した人物として知られている。2018年には、ヤン・ルカン、ヨシュア・ベンジオと共に、コンピューティングにおけるノーベル賞に相当するチューリング賞を共同受賞した。

「ジェフの人工知能(AI)への貢献はすさまじいものです」と、メタで主任AI科学者を務めるルカンは語る。

75歳のコンピューター科学者であるヒントンは2013年、自身のAI関連スタートアップであるDNNリサーチ(DNNresearch)がグーグルに買収されたことで、グーグルに入社。以来、グーグルと、教授を務めるトロント大学で研究を続けてきた。ヒントンの会社は自身の研究グループからスピンアウトしたもので、当時は画像認識用の機械学習に関する最先端の研究をしていた。グーグルはヒントンらの技術を画像検索の強化などに使ってきた。

ヒントンは長年にわたり、AIの倫理的な問題を指摘していた。とりわけ気にしていたのが、軍事用途への採用についてだ。ヒントンは以前、キャリアの大半をカナダで送る選択をした理由の1つは、米国防総省(DOD)に関連しない研究費を得るのが楽だったからだと語っている。

ヒントンが手掛けたものの中で最も有名なのが、1980年代に2人の同僚と共に提唱した、バックプロパゲーション(逆伝播)と呼ばれるアルゴリズムだ。人工ニューラルネットワークによる学習を可能とするもので、現代の機械学習モデルほぼすべての基礎となっているものである。簡潔に言うと、バックプロパゲーションはニューラル・ネットワークが狙い通りの結果を出すまで、人工ニューロン間のつながりを何度も調整するための手法である。

ヒントンは、バックプロパゲーションは生物の脳が学習する手法と似ていると考えていた。以降、ヒントンは生物の脳による学習にさらに近い手法を探し求めてきたが、これまでのところバックプロパゲーションよりも良い手法は見つかっていない。

「私はジェフと多くの議論を重ねてきましたが、私が常にバックプロパゲーションの支持者であったのに対し、ジェフは常に別の学習手順を探し求めていました。より生物が使う手法に近いと彼が考えるようなモデルで、恐らく脳による学習手法よりも優れたものをです」と、ルカンは言う。

「ジェフ・ヒントンは間違いなく、現代の深層学習を実現可能としたアイデアの多くについて、最も偉大な貢献をしたと認められるべき人物です」と語るのは、ヨシュア・ベンジオだ。ベンジオはモントリオール大学の教授で、モントリオール学習アルゴリズム研究所(MILA)の科学部長を務めている。「自身が深層学習に対して多大な貢献をしたからこそ、その結果として起きたAIの躍進がもたらす潜在的なリスクについて、世間に警告する責任を特に強く感じているのでしょう」。

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
ウィル・ダグラス・ヘブン [Will Douglas Heaven]米国版 AI担当上級編集者
AI担当上級編集者として、新研究や新トレンド、その背後にいる人々を取材。前職では、テクノロジーと政治に関するBBCのWebサイト「フューチャー・ナウ(Future Now)」の創刊編集長、ニュー・サイエンティスト(New Scientist)誌のテクノロジー統括編集長を務めた。インペリアル・カレッジ・ロンドンでコンピューターサイエンスの博士号を取得しており、ロボット制御についての知識を持つ。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る