KADOKAWA Technology Review
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ザッカーバーグ特別寄稿
AIバーチャル細胞で目指す
「病気のない世界」への道筋
Eva Redamonti
生物工学/医療 無料会員限定
How AI can help us understand how cells work—and help cure diseases

ザッカーバーグ特別寄稿
AIバーチャル細胞で目指す
「病気のない世界」への道筋

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI)は、AIを活用したバーチャル細胞モデルにより、病気の原因や治療に関するブレークスルーを実現するという。共同設立者であるマーク・ザッカーバーグとプリシラ・チャンがその狙いを本誌に寄稿した。 by Mark Zuckerberg2023.09.25

細胞とは最小の生命単位であり、病気について理解するための鍵となる存在だ。しかし、まだ多くのことが分かっていない。例えば、DNA、タンパク質、そして脂質といった何十億もの生体分子がどのようにして集まり、一つの細胞として振る舞っているのかを、私たちは知らない。人間の体内でさまざまな種類の細胞がどのようにして相互に作用し合っているのかも分かっていない。細胞、組織、そして臓器について、どのようにして病気にかかるのか、健康でいるために何が必要なのか、私たちが理解していることは限られている。

研究者が人工知能(AI)という強力な新技術を利用し、制御できれば、上記のような疑問に答えを見い出し、答えから得られた知識を世界中の人々の健康とウェルビーイングの改善に役立てるための力となるかもしれない。

AIモデルを使い、あらゆる細胞の状態と細胞の種類を示す手段を手にできたとしよう。こうした「バーチャル細胞」は、網膜で光を検知する桿体細胞や錐体細胞から、心臓の鼓動を維持する心筋細胞に至るまで、人体内のあらゆる種類の細胞の外見と既知の特性をシミュレートできるだろう。

科学者はこうしたシミュレーターを用いて、細胞が特定の状態や刺激についてどのように反応する可能性があるか、免疫細胞が感染症に対しどのように反応するか、希少疾患を持った状態で子どもが生まれた際に細胞レベルでは何が起こっているか、あるいは、患者の身体が新しい薬物に対しどのように反応するかといったことですら、予測可能になるかもしれない。そうなれば、科学的発見、患者の診断、そして治療判断といったものが全て、より迅速に、より安全に、より効率的になるだろう。

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI:Chan Zuckerberg Initiative)において、私たちは科学的データの生成と、コンピューティング用インフラ構築の支援をしている。上に挙げた事柄を現実のものとし、AIに関する最近の進展の恩恵を受けられるようなツールを科学者に提供して、病気に終止符を打つのに役立てるのだ。

データ

AI関連の進展と大量の科学データが組み合わさったことで、既知のほぼすべてのタンパク質の構造が予測されるようになった。ディープマインド(DeepMind)は慎重に収集された50年分のデータを使って「アルファフォールド(AlphaFold)」を訓練し、わずか5年間でタンパク質構造の謎を解き明かしてしまった。別の例として、メタ(Meta)が開発した「ESM」というAIシステムがある。これはタンパク質言語モデルであり、言葉ではなく、6000万を超えるタンパク質配列によって訓練されている。ESMはタンパク質構造や一つの配列における突然変異がもたらす影響の予測といった幅広い用途に利用されている。

バーチャル細胞モデリングシステムもまた、大量のデータを必要とする。チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブは2016年以来、細胞とその構成要素に関するデータの生成と注釈付け、それにより生じた大規模なデータセットを統合するためのツールの構築、そしてデータセットを広範に利用可能とする取り組みを実施。データセットからの学習とデータセットのさらなる発展に取り組んでもらえるよう、世界中の研究者を支援してきた。

世界中の研究者によるコンソーシアムにより、体内のあらゆる種類の細胞に関するリファレンスマップが構築されている。私たちのサンフランシスコ・バイオハブ(San Francisco Biohub)では生物 …

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