KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
「宇宙ゴミ」除去へ一歩、
日本企業とJAXAが挑む
史上初のミッション始まる
Astroscale
宇宙 無料会員限定
The first-ever mission to pull a dead rocket out of space has just begun

「宇宙ゴミ」除去へ一歩、
日本企業とJAXAが挑む
史上初のミッション始まる

地球軌道上に大量にあるスペースデブリは、人工衛星や宇宙船と衝突したら大惨事を起こしかねない。JAXAのプロジェクトの一環で打ち上げられた日本企業アストロスケールの人工衛星は、デブリ回収へ向けた一歩を踏み出した。 by Jonathan O'Callaghan2024.03.01

人工衛星、破片、国際宇宙ステーション(ISS)など、人類が作り出した9000トン以上もの金属や機械が地球を周回している。しかし、その大部分は、一つの原因からもたらされている。それは、宇宙時代が始まって以来、宇宙空間に廃棄されてきた1000基近いロケットの残骸である。

そして今、そのようなロケットの残骸の1つを取り除くミッションが初めて始まった。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が資金を提供したこのミッションでは、日本の民間企業アストロスケールの宇宙機がニュージーランドのロケット・ラボ(Rocket Lab)によって2024年2月18日に打ち上げられた。数週間以内にロケットの残骸に接近する予定である。接近後、ロケットの状態を調査し、後続のミッションがどのようにロケットの残骸を大気圏に再突入させることができるかを検討する。もし成功すれば、軌道上にある大きくて危険で制御不能なスペースデブリ(宇宙ゴミ)、つまり人工衛星や宇宙機と衝突すれば大惨事を引き起こしかねない物体を、どのように除去できるかを実証できるかもしれない。

「このミッションがいかに重要であるかは、いくら強調してもしすぎることはありません」。ミシシッピ大学の宇宙関連弁護士であるミシェル・ハンロン教授は言う。「『デブリ爆弾』は、ただそこに浮遊し、何かと衝突するのを待っているのです」。

地球を周回する1センチほどのデブリは推定50万個、10センチ以上の追跡可能な物体は約2万3000個ある。デブリとなったロケットの残骸は興味深く、危険なカテゴリーを構成している。宇宙空間で確認されている956基のロケットの残骸は、追跡可能な物体のわずか4%だが、全質量の3分の1近くを占めている。最も大きなロケットの残骸は、1980年代、1990年代、2000年代にロシアが廃棄したもので、重さは最大9トン、象と同じくらいある。

これらの廃棄されたロケット上段は、人工衛星や宇宙機を最終軌道に投入するロケットの最上段部分であり、打ち上げが完了すると放置され、地球を周回するようになる。制御されず、無秩序に回転し、大きなリスクをもたらす。米国のデブリ追跡会社レオラボ(LeoLabs)のスペースデブリ専門家、ダレン・マックナイトは、もし2つのロケットの残骸が衝突すれば、最大で「1万から2万個の破片」からなる致命的な雲が発生するだろうと話す。

このような事態はいつ起こってもおかしくない。「宇宙には、たくさんの物体が飛び交っていますから、どこかの時点でロケットの残骸の衝突が起こると思います」と英国のサウサンプトン大学のスペースデブリ専門家、ヒュー・ルイス教授は言う。それは、地球軌道の一部が使用不能となったり、最悪のシナリオではケスラー・シンドロームとして知られる衝突の制御不能な連鎖反応につながったりする大きな問題となりかねない。その結果、いくつかの軌道が使えなくなったり、デブリが数十年から数百年後に大気圏に再突入するまで有人宇宙飛行があまりにも危険になったりする可能性さえある。

2007年に国連が、宇宙機は運用終了から25年以内に宇宙から除去されるべきという新しいガイドラインを導入して以来、軌道上で放棄される …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る