「ファルコン9」不具合、
スペースX頼みの危うさ露呈
今後のゆくえは?
スペースXの主力ロケット「ファルコン9」が、エンジンの不具合によって運用停止となった。現在の打ち上げの大半を担い、これまでほとんどトラブルがなかっただけに、衝撃が広がっている。 by Sarah Ward2024.07.23
- この記事の3つのポイント
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- ファルコン9ロケットが打ち上げ失敗し運用停止となった
- 米国の航空宇宙産業はファルコン9に過度に依存している
- 代替ロケットの開発や運用の必要性が高まっている
スペースX(SpaceX)の「ファルコン9(Falcon 9)」は、世界で最も安全で稼ぐ力があるロケットの一つだ。しかし今、運用停止となっている。7月11日に滅多にないエンジンのトラブルが発生したことから、米国連邦航空局(FAA)は調査に乗り出した。現在のところ、再び許可が出るまですべてのファルコン9の打ち上げは停止となっている。今回の事故は、米国の航空宇宙産業がファルコン9に依存しすぎていることによるリスクを露呈した。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者で、宇宙への打ち上げに関するレポートを定期的に発行しているジョナサン・マクダウェル博士は、「航空宇宙産業はファルコン9に大きく依存しています」と明かす。マクダウェル博士によると、2023年に米国で打ち上げたロケットの83%を、ファルコン9とその発展型「ファルコン・ヘビー(Falcon Heavy)」が占めていたという。「ファルコン9の打ち上げ再開を待つ間、多くの打ち上げ計画が停滞することになるでしょう」とマクダウェル博士は付け加えた。
2024年7月11日、スペースXは同社の通信衛星スターリンク(Starlink)20基を軌道に投入するために、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からファルコン9を打ち上げた。打ち上げ後のファルコン9の様子を捉えたライブ配信映像を観ると、エンジンに氷が付着していく様子がわかる。スペースXによると、氷が蓄積したことによって液体酸素が漏れてしまったという。その結果、エンジンの一部が故障し、積載していた複数の衛星は予定よりも低い軌道にしか投入できなかった。これらの衛星は、地球の大気圏に再突入して燃え尽きる見込みだ。
FAAが7月11日に公開した声明は、12日にはXで広まった。FAAは、今回発生した不具合を認識しており、調査が必要だとしている。「今回の不具合に関連するシステム、プロセス、手順が公共の安全に影響を及ぼさないとFAAが判断することが、打ち上げ再開の前提となる」と声明は述べている。
スペースXは調査に協力する意向を示している。同社はWebサイトに「スペースXはFAAと協力して徹底的に調査し、根本となる原因を究明し、今後の打ち上げミッションを成功させるために是正措置を講じる」との声明を掲載した。調査の内容や期間に関する詳細は明かしていない。一方、スペースXは、調査期間中もファルコン9の運用を継続することを求めている。「FAAはこの要請について検討しており、検討プロセスのあらゆる段階で安全を重視する」とFAAは声明で述べた。
名目上の失敗
ファルコン9の安全運航実績は極めて優れている。2010年の初回打ち上げ以来、300回以上の打ち上げ実績を …
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