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ビジネス・インパクト Full Scale of Olympic Financial Disasters Revealed

オリンピックの予算は
なぜ大幅に超過するのか?

オックスフォード大学の研究で、1960年以降開催のオリンピック予算は平均156%超過しており、3分の1の大会では、コストが不明と判明した。 by Emerging Technology from the arXiv2016.07.21

8月に開幕されるリオデジャネイロオリンピックでブラジル政府は新しいスタジアムやオリンピック村、国際報道・メディアセンター、交通機関、管理体制、人件費などに計45億ドル以上を費やす。2009年にリオが開催都市に決定した当初に予定していた金額よりはるかに大きく、おそらく50%程度の予算超過になるが、オリンピックが終わるまでは誰にもわからない。もちろん、最終的な数字がなんであれ、当初予算を大きく上回ることは間違いない。

オリンピックには、絶句するほどの予算超過がつきものだ。では、橋や鉄道、高速道路、発電所の建設や、ITプロジェクトよりも浪費度は大きいのだろうか?

この答えは誰も知らない。オリンピックの開催コストや予算超過を大規模に調査した(主催者でも政府でもない)独立研究がなかったのだ。

英国オックスフォード大学のベント・フリウビャやアリソン・スチュワート、アレクサンダー・バジアの研究により、その答えが初めて明らかになった。1960年のミュンヘンオリンピック以降の夏と冬の大会の支出を詳細に分析し、オリンピックで起きる財政的な惨状のひどさがわかったのだ。調査により、最も安く済んだ大会と最も高額な大会が判明、予算超過は平均156%だとわかった。他の巨大プロジェクトの予算超過がかすんでしまうほどの割合だ。

調査チームはまず、1960年以降のすべての夏・冬の大会コストを調査・集計し、事前に予定されていた予算と比較した。計30の大会のうち19の大会でデータが得られたというが、これ自体が興味深い事実である。

「つまり、理解に苦しむかもしれませんが、1960~2016年の大会のうち3分の1以上では、誰も予算超過について把握していないようなのです」

コストの算定には、大会の運営に関する項目のみを含めた。つまり、交通機関やスタッフ管理、セキュリティ、食事、メダル授与式などである。また、競技会場やオリンピック村、メディア施設の建設といった直接的な主要コストも含まれている。

地域の交通インフラの改修などの間接的な主要コストは多くの大会で他のコストの合計よりも大きいが、今回の調査には含まれない。

さらに、通貨変動やインフレーションなども考慮し、実質コストを比較する際の国際的なルールも取り入れた。

調査結果は興味深い。最も高額だった夏の大会は2012年のロンドンオリンピックで、支出額は150億ドル。当初予算を76%超過している。

調査チームは、この年の主催者に特に厳しい目を向けている。ロンドンの開催都市決定は2005年だったが、わずか2年後には予算見積もりが不適当だと判明し、100%上乗せされた。

「最終的な超過が修正予算よりもわずかに下回ることが分かると、事務局は不誠実にも、しかし堂々と『ロンドンオリンピックは予算内に収まった』と言い放ったのです。このようにコストや予算超過について大衆に意図的に虚偽情報を流すことは、情報操作と完全な嘘の境界線上にある行為でしょう」(フリウビャ教授)

最も安く済んだ夏の大会は1964年の東京オリンピックで、合計2億8000万ドルだった。冬の大会では同年のインスブルックの支出が最も少なく、わずか2200万ドルだった。

総じて、冬大会は夏に比べて支出がかなり少ない。平均額は、夏の52億ドルに対して31億ドル(冬の大会の中央値は20億ドル以下)だ。

冬の大会の平均と中央値を乖離させている原因は2014年のソチ大会だ。支出額は219億ドルで、史上最も高額な冬の大会だった。

しかし調査結果の中で最も嘆かわしいのは、予算超過だ。「例外なくすべての大会で、予算を超過しています」とフリウビャ教授はいう。オリンピックの予算超過は平均156%。超過率が最大だったのは1976年のモントリオール大会で、720%という驚異的な超過だ。モントリオール市は支払いを終えるのに30年かかった。2位は1980年のレークプラシッドは324%の超過で、ソチの289%、バルセロナの266%と続く。

興味深いことに、予算超過が最小だったのは2008年の北京大会で、わずか2%だった。フリウビャ教授のチームは数字の信頼性を調べたが、妥当だと判断した。競技者1人当たりの大会コストなどの尺度で見てみると、他の大会と変わらなかったのだ。

「したがって、公表されているコストは、北京オリンピックの開催については正しいと考えられます。公式の数字に手が加えられた直接的証拠も見つかりませんでした」

中国が、交通インフラなどスポーツ関連以外の分野に多くの費用を費やしたことは間違いない。これらの合計は400億ドル以上になると思われる。

最後にオックスフォードの調査チームは、オリンピックと他の巨大プロジェクトとの予算超過の比較を試みたが、ここでもオリンピックは分が悪い。

大規模な交通プロジェクトの予算超過の平均は、道路が20%、大型の橋が34%、鉄道が45%だった。また、ダムの平均は90%、ITプロジェクトは107%だった。

なぜオリンピックではこれほど予算が超過するのだろうか? 調査チームは可能性の1つとして、大会開催までの期間を挙げる。何か深刻な問題が起きても、スケジュールは変えられない。「オリンピックの事務局ができることとは、問題解決のためにお金をつぎ込むことぐらいなのです」と研究チームは述べる。つまりオリンピックには事実上、自由に使えるカネが必要なのだ。

しかし、浪費を削減する努力はされている。実際、効果も上がっている。1990年代、国際オリンピック委員会は大会運営のベストプラクティスを学ぶ「Olympic Games Knowledge Management Program」を立ち上げた。知見を積み上げ、それを次の大会に活かす試みだ。このプログラムは2000年のシドニー大会の前に始まり、現在でも実施中だ。

プログラムは成果を上げている、とフリウビャ教授はいう。1999年以前の予算超過は平均230%だったが、ソチの289%超過が含まれているのに、以降は75%に下がっているのだ。「『Olympic Games Knowledge Management Program』は、大会コストの削減に貢献しているようだ」と調査チームは結論付けた。

リオ大会の予算超過は約51%で、全体支出や競技者1人当たりのコストでは平均程度に収まっている。直近の2大会、ロンドンとソチにおける多額の支出とは逆を行く格好だ。

将来オリンピック開催地に立候補しようと画策している都市や政府にとっては、この問題は頭痛の種となるだろう。オックスフォード大学の調査チームは史上初めて、過去の大会コストや予算超過について第三者的な視点から分析したのだ。「オリンピックの開催決定は、多額の費用がかかり、財政的にもリスクの大きな巨大プロジェクトを引き受けることを意味します。多くの都市や国が痛い教訓として学んでいる事実なのです」と調査チームは警告する。

参照:arxiv.org/abs/1607.04484: オックスフォード・オリンピック研究2016:大会費用と予算超過

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