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本誌の編集フェローが最近ハマっていること(ショートコラム)
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3 things Michelle Kim is into right now

本誌の編集フェローが最近ハマっていること(ショートコラム)

MITテクノロジーレビュー[米国版]の編集フェローであるミシェル・キムは最近、韓国のバーチャルアイドルグループに夢中になっている。 by Michelle Kim2026.05.17

1. イセゲアイドル

K-POPが奇妙だと思っているなら、モーション・キャプチャーを通じてアニメ風のデジタルキャラクターとして活動するバーチャル・アイドルたちは、さらに衝撃的だろう。私のお気に入りは、韓国のVTuberであるウーワクグッド(デジタルペルソナとして配信活動をするストリーマーでもある)が生み出したガールグループ、イセゲアイドルだ。イセゲアイドルの6人のメンバーは匿名で活動しており、そのことがかえって、稀有な率直さとユーモアを発揮する余地を与えているように見える。彼女たちはリーグ・オブ・レジェンド囲碁マインクラフトなどのゲームをプレイし、雑談を交わし、アニメのサウンド・トラックとビデオゲーム音楽の中間のような、どこかキッチュな音楽を披露する。極めてDIY的であり、同時に非常に親密でもある。そして、このグループの爆発的な人気は、孤独を抱え、文化的な拠り所を失い、就職難に苦しみ、恋愛を諦め、ネット上に友情を求める韓国のZ世代の心情を映し出している。イセゲアイドルは、現実がうまく機能しなくなったとき、人々がネット上にどれほど魔法のような宇宙を築き上げられるかを示している。

2. プーチンに抗う無名の男

パベル・タランキンは、ロシアの銅製錬の町カラバシュで学校教師として決して平坦ではない人生を送っていた。かつてユネスコは、この町を「地球上で最も有毒な場所」と呼んだこともある。しかし、彼が一部を秘密裏に撮影した映像からは、彼がこの町を深く愛していたことが伝わってくる。立ち並ぶ煙突、厳しい寒さ、外を歩いているうちに口ひげに張りつく氷、そして何よりも、目を輝かせた生徒たちを。だからこそ、遠くで続く消耗戦と国家プロパガンダによって町が変貌していく様子はいっそう痛ましい。教室に民主主義の旗を掲げる反戦的な進歩主義者だったタランキンは、新たな愛国主義カリキュラム、強制的なパレード、傭兵たちの訪問、そして生徒たちと築き上げてきた創造的な空間の喪失に向き合わなければならなかった。デビッド・ボレンスタイン監督によるこのアカデミー賞受賞ドキュメンタリーでは、タランキン自身が撮影した映像によって彼の物語が語られる。最も心を打たれたのは、子どもたちの周囲にいる「大人」という存在の奇妙さである。私たちは、自覚しないまま、驚くほど深い形で子どもたちを形作っているのだ。

3. ジェイムズ・エイカスターの『レパートリー』

私は、水1本に20ドルも取るサンフランシスコの薄汚れた劇場でコメディアンを見るために150ドル払ってしまうような人間だ。スタンダップコメディはまだ死なないと信じるほど、どうかしているのである。2月には英国のコメディアン、ジェイムズ・エイカスターのライブを観た。だが、それは平凡なショーだった。しかし、2018年にネットフリックス(Netflix)で配信されたミニシリーズ『レパートリー』は傑作である。エイカスターが失恋を経験した直後に撮影されたこの4部構成の作品では、彼は複数のキャラクターを演じる。その中には、スタンダップコメディアンとして潜入捜査をするうちに自分が何者かわからなくなり、ついには離婚してしまう刑事もいる。そして、物語はそこからさらに奇妙な方向へ進んでいく。「これまで付き合ってきた相手はみな、本当は自分が思っていたほどあなたのことを好きではなかった――そんな事実に少しずつ気づいていく存在だとしたら?」とエイカスターは問いかける。もし最高のコメディが、自分の置かれた地獄のような状況を真正面から見つめることで生まれるのだとしたら、エイカスターには今後もさらなる苦難が訪れることを願わずにはいられない。

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ミシェル・キム [Michelle Kim]米国版 フェロー
AIジャーナリズムのためのターベル・センター(Tarbell Center for AI Journalism)の支援を受けて執筆している、MITテクノロジーレビューのAI担当記者。これまでに、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)で労働とテクノロジーをテーマに取材し、フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌では韓国政治について執筆していた。ジャーナリズムに転身する以前は、米カリフォルニア州で企業弁護士として勤務。
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MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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