KADOKAWA Technology Review
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知性を宿す機械 Deep Learning Creates Earth-like Terrain by Studying NASA Satellite Images

ゲーム制作に革命か?NASA画像から深層学習で背景を自動生成

ビデオゲームで使われる風景画像をNASAのデータをもとに機械学習で自動生成する方法が研究されている。実用化されれば、ゲーム制作の流れが変わりそうだ。 by Emerging Technology from the arXiv2017.07.28

ビデオゲームの風景や人工的な世界を創り出す方法は2種類ある。1つは、地形を手作業で作り、岩、草、木、雪などを適切な色や質感で装飾する方法だ。この方法は高品質だが、人件費が高くつく。

もう1つは、アルゴリズムで景色を生成する方法で、早くて安価だ。この方法を駆使したゲーム「マインクラフト」は、プレイするたびに新しい景色を見ることになる。

こうした風景を生成しているアルゴリズムの開発は成熟しており、プログラマーは何年にもわたって微調整を続け、異なる気候、質感、高度などを作り出してきた。しかし、風景を生成する新しいアルゴリズム自体を書くのは時間がかかり、コストも高くつく。そのため、アルゴリズムを書く作業を自動化できれば、飛躍的な進歩となる。

2017年7月20日、カナダにあるアルゴリズム学習モントリオール研究所の修士課程生クリストファー・ベッカムとクリストファー・パル准教授は、リアルな風景を生成するために地球の衛星画像を訓練用データセットに使い、深層学習用機械を訓練した。そして実際に、この機械自身が、独自のアルゴリズムを書いている。人工的に風景を生成する方法が大きく変わることが期待される。

パル准教授たちが利用したシステムは、競争式生成ネットワーク(Generative Adversarial Network、GAN)と呼ばれる。彼らが使ったGANは、リアルな風景の生成に取り組む、2台の深層学習用機械で構成されている。

1台目の機械が新しい風景を生成し、2台目の機械が結果を評価してフィードバックを返す。そして1台目が、返されたフィードバックから新しい風景を作成し、2台目が評価してフィードバックを返す、といった流れだ。これは、フィードバックを適切に反映した風景を作成する方法を、2台目に学習させるという考え方だ。

この過程で最も重要なことは、理想的な風景とはどのようなものなのかを、1台目の機械に学習させることだ。機械学習におけるこうした作業は、たとえば、顔認識や物体認識のように、学習用画像の大規模なデータベースがあれば簡単なことだ。しかし、風景用の大きなデータベースはまだなかった。そのため、パル准教授たちの最初の目標は、学習のための風景画像データベースを作成することだった。

ところが、米国航空宇宙局(NASA)の「Visible Earth」プログラムのおかげで、まさに必要としていたデータを入手できることが明らかになる。このプログラムでは、地球の詳細な地図を作成しているのだ。高度、地形、色のデータも含まれている。

NASAの画像は、2万1600×1万800ピクセルと巨大だ。1ピクセルは1平方キロメートルに相当し、地球全体が見られる。パル准教授たちは、512×512ピクセルのウィンドウをVisible Earthの画像にランダムに配置し、ウィンドウをスライドして、訓練用の大きな画像データベースを作成した。無駄を排除するため、広い範囲が真っ黒になっている画像(海だけの画像)は取り除く。「収集した画像には、ジャングル、砂漠、北極などのさまざまなバイオーム(地形、植物群や色、高度などの自然要素)が映っています」とパル准教授たちはいう。

その後、パル准教授たちは、このデータセットを使用して、深層学習用機械が地球のさまざまなタイプのリアルな地形を認識できるように学習させる。次に、別の深層学習用機械を用意し、ランダムな512×512ピクセルの画像を生成させる。この機械が生成した画像を地形認識を学習した機械に送って、フィードバックを返す。

もちろん最初は、生成された風景は地球の地形の描写としてはお粗末なものとなる。しかし、機械は何度も反復して、実風景に近い画像を作成する方法を学習する。そして、学習が完了すれば、機械は地球の地形に似た風景を生成し続けられる。

しかし、画像は完璧ではない。学習過程で、リアルな風景になじまない人工物まで学習してしまうことがある。学習の設定を細かくするか、人工物の画像を不鮮明にすれば回避できるとパル准教授らはいう。

まだやるべき仕事が残っていることは明らかだが、パル准教授たちはこの結果に満足しているようだ。「現実世界のデータに基づいた地形を自動生成する正当な第一歩を踏み出しました」という。

アルゴリズムの自動生成は、広く応用できる興味深い成果だ。最初は、訓練用画像データベースは地球ではなくてもよいだろう。NASAは、月、火星、タイタン(土星の第6衛星)など太陽系のさまざまな天体の詳細な画像を保有しており、パル准教授たちのような機械学習に使用できる。マインクラフトのようなゲームでは、人の手を煩わせず簡単に、はっきりと月や火星にいるように感じられるだろう。

訓練用画像データベースは、地形である必要もない。「アルゴリズムの自動生成の考え方を、たとえば顔などのテクスチャを3Dメッシュに適用することが想像できます」とパル准教授たちはいう。

ゲーム制作者など、幅広い分野の人たちが興味を持つ可能性がある。「アルゴリズムの自動生成の可能性は、エンターテインメントの内容を豊かにするだけでなく、3Dアーティストなどのコンテンツ制作者の仕事を手助けする有用なツールにもなります」。

(参照:arxiv.org/abs/1707.03383 : GANを使用した地形生成手続への一歩)

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