KADOKAWA Technology Review
×
ひと月あたり1000円に。購読キャンペーン実施中!
First Evidence That Social Bots Play a Major Role in Spreading Fake News

誰がフェイクニュースを拡散するのか? その犯人が明らかになる

ねつ造ニュースがどのように拡散されるかを調べた初の研究により、ねつ造ニュースを拡散しているソーシャル・ボットの存在が明らかになった。 by Emerging Technology from the arXiv2017.08.09

ねつ造ニュースとソーシャル・メディアでの拡散は、現代社会の重大な脅威のひとつとなりつつある。最近では、ねつ造ニュースが株式市場の操作や、危険な医療ケアの選択、2016年の米国大統領選など選挙への介入にまで利用されている。

ねつ造ニュースの拡散を防ぐのは、今や明白な喫緊の課題となっている。そこで、ある重要な疑問が湧いてくる。ねつ造ニュースは、そもそもどのようにして拡がるのだろうか。

インディアナ大学ブルーミントン校のチェンチェン・シャオ訪問学生と研究チームは、その答えにつながりそうな研究結果を発表した。研究は、ツイッターでねつ造ニュースがどのように拡散するかを初めて体系的に調査したものだ。その不可解な世界への優れた見解を示し、この問題を制御する明確な戦略を提案している。

 

Diffusion network for the article titled “Spirit cooking: Clinton campaign chairman practices bizarre occult ritual," published by the conspiracy site Infowars.com four days before the 2016 U.S. election.
「魂の料理:クリントンの選挙事務長、奇怪なオカルト儀式を行う」と題された記事(2016年の米国大統領選4日前に陰謀サイトInfowars.comが公開)の視覚化されたネットワークでの拡散状況。

問題となっているのは、ねつ造または誤解を与えるニュースの発信だ。その蔓延はあまりにひどく、オンライン情報の正確性を調べるため、snopes.com、politifact.com、factcheck.orgなど数々の独立系事実確認団体も生まれた。

独立系事実確認団体のサイトには、ねつ造ニュースを頻繁に発信している122のWebサイトがリストになっている(infowars.com、breitbart.com、politicususa.com、theonion.comなど)。「風刺サイトも対象に含めています。多くのねつ造ニュースのソースが、自分たちのコンテンツは風刺だと主張しており、判別が難しいためです」と、シャオのチームは説明する。

同チームは、これらのねつ造ニュースWebサイトによる40万本の記事を監視し、ツイッターを通じてどのように拡散したかを追求した。研究のため、ねつ造ニュースに関係したツイッターの投稿を約1400万件を集めた。

同時に、事実確認団体によって書かれた約1万5000本の記事と、記事に関係した100万件以上のツイッターの投稿も調べ上げた。

次に、このニュースを拡散したツイッターアカウントを調べ、それぞれのアカウントの最新ツイートを最大200件ずつ集めた。この方法によって、ツイート動向を分析して、アカウントが人間が使っているものか、ボットによって使われているかを推測できる。

それぞれのアカウントの持ち主を判断し、最後に、人間やボットがいかにしてねつ造ニュースや事実確認がなされたニュースを拡散するのかを調べた。

研究チームは、2つのオンライン・プラットホームを開発した。ひとつはホアクシー(Hoaxy)と呼ばれ、ねつ造ニュース記事の拡散を追跡し視覚化する。もうひとつはボトムメーター(Bolometer)といって、ツイッターのアカウントを使っているのが、人間かボットかを見極めるものだ。

研究結果を読んでみるとかなり興味深いことが見えてきた。「偽情報を頻繁に拡散しているアカウントは、ボットである確率が著しく高いです」と、シャオはいう。「ソーシャル・ボットが、ねつ造ニュースの拡散に重要な役割を果たしているということです」。

シャオのチームは、ねつ造ニュースが公開された直後、拡散のためボットがとりわけ重要な役割を果たしていると語る。さらに、ボットは影響力のあるユーザーへツイートを発信するようプログラムされているという。「世間が関心を寄せるねつ造ニュースの拡散初期の段階で、自動アカウントは特に動きが活発です。そして、影響力のあるユーザーをターゲットにする傾向にあります」

賢い戦略だ。情報は、ソーシャル・ネットワークで広く影響力を持つ人を経由すると、急速に拡散する確率が高くなる。そのため、影響力の高いユーザーをターゲットにすることがカギとなる。人間は自動アカウントにコロッと騙され、そうとは知らずにねつ造ニュースの拡散の種を蒔いてしまうことがある(もちろん、分かっていてわざとやる人間もいる)。

実に興味深い研究で、ねつ造ニュースの拡散を抑える明快な方法を導き出せる。「研究結果から、ソーシャル・ボットを減らすことが、オンラインの偽情報拡散を抑える効果的な戦略であるといえます」と、シャオ訪問学生はいう。

確かに興味深い結論ではあるが、どうやって実行するかは明らかではない。

特定のソーシャル・ボットを禁止するという方法もひとつの手だが、正当な情報の拡散に重要な役割を果たしているソーシャル・ボットも数多く存在するため、一筋縄ではいかないだろう。

また、法律は国境を超えられない。過去にねつ造ニュースの拡散が外国からの操作だったことからも分かるように、法がどこまで対応できるか定かではない。

しかし、ねつ造ニュースの拡散は、正当で重大な社会的関心事なのも事実だ。ねつ造ニュースがどのように拡散するかを理解することは、対策への第一歩である。

(参照:arxiv.org/abs/1707.07592: The spread of fake news by social bots)

人気の記事ランキング
  1. These drone photos show urban inequality around the world ドローン空撮がさらけ出す、世界の都市に潜む不平等
  2. The world is waking up to India’s plight—too late 1日100万人超感染か インド、新型コロナ変異株で深刻な危機に
  3. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
Emerging Technology from the arXivは、最新の研究成果とPhysics arXivプリプリントサーバーに掲載されるテクノロジーを取り上げるコーネル大学図書館のサービスです。Physics arXiv Blogの一部として提供されています。 メールアドレス:KentuckyFC@arxivblog.com RSSフィード:Physics arXiv Blog RSS Feed
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. These drone photos show urban inequality around the world ドローン空撮がさらけ出す、世界の都市に潜む不平等
  2. The world is waking up to India’s plight—too late 1日100万人超感染か インド、新型コロナ変異株で深刻な危機に
  3. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.3/Spring 2021Innovation Issue

AI/ロボット工学、コンピューター/電子機器、輸送、ソフトウェア、インターネット分野で活躍する13人の日本発のイノベーターを紹介。併せて、グローバルで活躍する35人のイノベーターの紹介と、注目のイノベーション分野の動向解説も掲載しました。
日本と世界のイノベーションの最新情報がまとめて読める1冊です。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る