材料科学のブレークスルーが救う地球のエネルギー危機
マイクロエレクトロニクスにおけるムーアの法則がこのまま続くと、電子機器は地球のエネルギー予算の半分を20年で使い切ってしまうだろう。エネルギー危機を乗り越えるカギは、材料科学におけるブレークスルーにある。 by Emerging Technology from the arXiv2017.09.01
マイクロエレクトロニクスによる革新の大きな特徴は、ムーアの法則によって特徴づけられるスケーリング能力にある。ムーアの法則を具現化するように、コンピューティング能力は急速な成長を続けており、現在の最上位機種のスマホはすでに、1990年代初めに世界最強だったスーパー・コンピューターと同等の能力を備えている。スマホは今後、さらに能力を高めていくだろう。
しかし、近い将来に待ち構えている問題がある。強力なコンピューターが広く普及するにつれて、消費する電力も増える。ムーアの法則が続くと、電子機器は地球のエネルギー予算の半分を20〜30年で使い切ってしまうことになる。
これが持続可能でないことは明白だ。では、どうすればいいだろうか。
現在、この問いに対する何らかの回答を持っていると思われるのが、スイス・チューリッヒ工科大学の材料科学者であるニコラ・スパルディン教授だ。スパルディン教授は、材料科学者は地球を救うことができるとしており、教授の解決策はITに対する考え方や使い方を変える根本的なブレークスルーとなり得るだろう。スパルディン教授の論文は非常に興味深いものであり、ブレークスルーヘとつながる可能性のある道筋のいくつかについて議論している。
スパルディン教授は、材料科学のブレークスルーがいかにして人類文明を形成してきたかを示すことから始める。繊維や樹脂などの複合材料の発見によって、人は刃を棒に接合してナイフや斧を作れるようになった。
画期的な溶錬技術の発見によって、石器時代にはおそらく製陶釜であったものが、青銅器時代、鉄器時代へと発展していった。これにより農業は大きく変化し、都市や国が建設されていった。金属技術はまた兵器技術に重要な変化をもたらし、約4000年後には産業革命を引き起こした。
その後、電子の発見によって真空管、半導体トランジスタ、さらにはマイクロエレクトロニクス全般が開発された。現代の電子機器に欠かせない超純度のシリコンは当初、第二次世界大戦中の高周波レーダー受信機のた …
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