遺伝性難聴を劇的改善
「クリスパー点耳薬」
中国で実験へ
CRISPRのDNA切断タンパク質を耳に直接注入することで、優性遺伝障害による進行性難聴を治療する研究が進んでいる。既にマウスによる実験で効果を確認しており、次の段階として中国で豚に対する実験を実施し、最終的には人間に適用する予定だとしている。 by Antonio Regalado2017.10.05
クリスパー(CRISPR)が遺伝子編集による治療の次なる注目株であることは誰もが認めるところだ。しかし、さまざまな用途につかえる遺伝子用ハサミをどのようにして人間の体内に送り届ければよいのだろうか。
一般的な方法は、遺伝子編集の指令書を搭載した何十億ものウイルスを、人間の細胞に感染させることだろう。しかし、もっと簡単に治療をする方法について研究している科学者たちがいる(「ジェルや飲み薬も登場、CRISPRを体内に届ける5つの方法」を参照)。マサチューセッツ眼科耳鼻科病院の聴覚研究者であるジェンイー・チェン博士は、遺伝子編集したウイルスをマウスの耳に直接注入する治療を実施している。
クリスパー点耳薬といえるほど簡便なものではないが、かなりそれに近い。
チェン博士の研究室では、人間にも見られる、徐々に聴覚が消失していく遺伝的欠陥を持つマウスを治療している。同研究室ではこのマウスの血統を「ベートーベン」と呼んでいる。最後には自分自身の音楽さえ聴こえなくなった作曲家にちなんでの命名だ。
マイアミ大学遺伝病センターの所長を務める耳科医のシュウェジャン・リュー博士は、2017年5月に開催されたある会議でチェン博士たちの研究の結果について知った。「聴覚の劇的な回復が見られたそうです。進行性難聴にクリスパーを使った最初の例になるでしょう」とリュー博士は語る。
実は、遺伝子の異常が耳の細胞に …
- 人気の記事ランキング
-
- Quantum navigation could solve the military’s GPS jamming problem ロシアGPS妨害で注目の「量子航法」技術、その実力と課題は?
- China figured out how to sell EVs. Now it has to deal with their aging batteries. 中国でEV廃車ラッシュ、年間82万トンのバッテリー処理追いつかず
- Text-to-image AI models can be tricked into generating disturbing images AIモデル、「脱獄プロンプト」で不適切な画像生成の新手法
- The paints, coatings, and chemicals making the world a cooler place 数千年前の知恵、現代に エネルギー要らずの温暖化対策