KADOKAWA Technology Review
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First Evidence That Night Owls Have Bigger Social Networks than Early Risers

社交的な夜型、孤独な朝型——行動パターンに明らかな違い

1000人のスマホの操作履歴を1年間に渡って分析した結果、朝型、夜型の人の社会的な行動パターンの違いが明らかになった。さらに大規模なデータを企業から得られれば、より深い研究結果が得られるかもしれない。 by Emerging Technology from the arXiv2017.10.04

人の生活パターンは地球の自転、ひいては昼と夜のサイクルに大きく影響されている。24時間周期のリズムは、人の生化学的・生理的状態だけでなく、心理的・社会的行動にも影響を与えている。

人によって、昼夜のサイクルとの関係は大きく異なる。夜型の人が遅く起きて遅く寝る一方で、1日の始めに最も活動的になるのが朝型の人だ。その他に、どちらのクロノタイプ(朝型か夜型かを決める24時間周期のリズム要素)にも当てはまらない人もいる。

自分が起きている時間帯に寝ている人との交流は難しいので、クロノタイプは間違いなく、その人が交流する相手を大きく左右する。そのため、恐らく夜型の人は夜型の人と、朝型の人は朝型の人と交流する傾向にあることは想像に難くない。しかし、このような社会的行動に関する大規模な根拠について、これまでに調査されたことはなかった。

フィンランドのアールト大学の博士課程生タラウェア・アレラボード(コンピュータサイエンス専攻)と彼女の友人によって、1000人を超えるソーシャル・ネットワークと睡眠パターンを1年間にわたって調査した結果、意外な発見があった。

調査方法は単純だ。研究者は1000人のボランティア学生に、携帯電話の使われ方を計測するアプリを搭載したスマートフォンを貸与した。アプリはスマホの使用時間や、電話したり、テキストメッセージのやり取りをしたりした人数を記録するものだ。

この方法で、研究者は被験者の1日の行動パターンの生データを取得する。「スマホのデータ収集アプリから得られる『スリープ解除』イベントのタイムスタンプ・データを使って、被験者の行動クロノタイプを特定します」とアレラボードたちは話す。

その後、午前5時から7時という通常よりも早い時間の活動が活発な被験者を朝型と分類し、深夜0時から午前2時という通常よりも遅い時間に活動した人を「夜型」と定義した。全被験者の半数以上にあたる残りの人たちを、中間型と分類した。

次に、チームは全被験者間のソーシャル・ネットワーク・リンクを作成した。各被験者は1000人で構成する実験ネットワーク内のノードであり、被験者間で電話やテキストメッセージで通信するとお互いにのリンクが記録される。

最後に、夜型と朝型の人たちのソーシャル・ネットワークを分析して比較した。特に、人気のある被験者、同じグループ内の被験者が互いにどれだけ通信し合っているか、誰がネットワーク内の中心的存在かなどに注目した。

結果は興味深いものになった。「夜に活動的になる夜型は、各ネットワーク・メンバーとの通信は比較的頻繁ではないものの、朝型の人よりも広いネットワークがあります」(アレラボード)。さらに、夜型はネットワークの中心的存在であることが多いという。

各グループの被験者が自身と似ている人(同類者) とどのようにつながっているかについては、意外な結果となった。アレラボードたちによると、夜型は他の夜型の人と偶然とは思えないほど頻繁に通信しているという。だから、彼らは少なからず同類とみられる。

しかし、朝型にはそのような傾向は見られない。「驚いたことに、こうした同類性は朝型には見られませんでした」。

この現象を説明できる1つの可能性として、社交的な集まりは1日の遅い時間から始まる傾向があることが挙げられる。夜更かしする人はこうした集まりに参加したり、集まりを企画したりする可能性が高い。「おそらく、遅い時間に活動的なクロノタイプが有利になるという傾向は、それほど意外ではないかもしれません」とアレラボードたちはいう。また、早朝の社交イベントは稀なので、朝型はより多くの時間を1人で過ごし、少数の人と交流するとも推測している。

この調査はソーシャル・ネットワークの範囲を超えて、興味深い示唆を与える。クロノタイプが学業成績、BMI指数、体と心の健康など、あらゆることに密接に関わっているということは、以前から研究者の間で認識されていた。

他の研究では、その他の行動がソーシャル・ネットワークといかに関連しているかが示されてきた。たとえば、BMI指数の高い人は、同じように肥満の人と交流する傾向にある、といったことだ。

クロノタイプを深く研究すれば、重要な真相が明らかになる可能性はある。さらに、ネットワーク研究者や人類学者にとって、携帯電話会社の大規模なデータは有力な生データとなる。たとえば、クロノタイプの影響をさらに細かく分類できる可能があるためだ。

研究者が何を発見するか、期待して見守りたいものだ。

(参照:http://arxiv.org/abs/1709.06690: Social Network Differences of Chronotypes Identified from Mobile Phone Data)

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