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日本の学生は世界でどう戦うか? 
先端テック企業トップがエール
MIT Technology Review Academic Conference Event Report

日本の学生は世界でどう戦うか?
先端テック企業トップがエール

人工知能(AI)の研究開発と実社会への展開で注目を集めるテクノロジー企業2社のトップが、学生向けにAIテクノロジーの最新動向とこれからの働き方を語った。 by Yasuhiro Hatabe2017.11.21

技術を学び、研究する学生・大学院生を対象とするイベント「MITテクノロジーレビュー アカデミックカンファレンス」が、10月24日に開催された。

前半は、Preferred Networks(プリファード・ネットワークス)の共同創業者である岡野原大輔副社長と、求人検索エンジン「Indeed」を開発・運営するグローバル企業Indeed(インディード)の出木場久征CEO(最高経営責任者)が、それぞれ講演した。

岡野原氏は研究者・エンジニアとしての立ち位置から、出木場氏はビジネスサイドから、「テクノロジーの社会実装の最前線」について語った。

製造業、バイオヘルスケア分野で進むAIの適用

Preferred Networksの岡野原大輔副社長

岡野原氏の講演タイトルは「最新の人工知能技術とその応用」。Preferred Networksは、交通システム、ロボット、バイオヘルスケアなどの領域において、他社と協業で人工知能(AI)技術の活用を進めている。

そのうちの1つ、トヨタ自動車から出資を受け、共同研究を進める自動運転システムの現状を紹介した。

自動運転にAIを使うとき、大きく2つの目的がある。1つは、クルマの周囲の状況を把握・認識するための環境認識の部分。もう1つは、周りの状況を受けて、どう走るか、曲がるか、止まるかを考える「プランニング」の部分だ。

「深層学習のおかげで画像認識の精度は格段に上がり、単眼のカメラでも高い精度で周辺の環境を認識できるようになりました」と岡野原氏。

人間の場合、視界にいろいろなものが入っていても、一カ所にしか集中できない。しかし、自動運転システムは、視野全体に集中することができる。現在は、人間なら200人程度まで同時に認識して、そのうち誰か1人でもクルマに向かってきたら、その異常をリアルタイムで認識してクルマを止められるという。

人間やクルマなど動くもの以外で、どこが車道でどこが歩道か、工事中で進入禁止になっていないかなどの静的な環境を把握する「セグメンテーション」というタスクも、AIによる画像認識の役割だ。

「これらの技術が実際に市場に出るまでは少しタイムラグがありますが、数年以内にはあらゆるクルマに搭載されます」と明言した。

「プランニング」については、コンピューター上でのシミュレーション動画で説明した。現在、実用化されているほとんどの自動運転システムは、ルールベースで動いている。例えば「人間が3メートル以内に近づいたらブレーキを踏む」という仕組みだ。

シミュレーション上では、複数のクルマがコースから外れず、他のクルマともぶつからず、スムーズに走り回る。それらのクルマは、センサーからもらった情報をもとに、その情報がどのような意味を持つかは与えられず、深層強化学習で自ら「動き方」を学んでいくのだという。

岡野原氏によると、「これを実車で使うにはまだリスクがあり、実世界への適用には至っていません。ただ、レゴのマインドストームを使ったシミュレーションまでは実現しています」とのことだ。

このほか、岡野原氏からは、工作機械のファナックとの提携で進めるロボティクスへのAI活用、国立がん研究センターと進める、がんの早期診断などのバイオヘルスケア分野での研究についても紹介された。

研究はオープンになり、学習コストは小さくなる

「深層学習の研究はめまぐるしく速く進んでいると感じています。世界で同時多発的に進行していて、追いきれないほど」と岡野原氏は話す。

「オープンジャーナルで、論文が誰でも投稿できて、誰もがソースコードをGitHubで共有できる時代。誰かが研究成果を発表したら、別の研究者がその改善版を2週間後に地球の反対側で出すというケースもめずらしくありません」と、研究の世界が従来と大きく変わってきた状況を指摘した。その変化と、AI活用の流れがクロスしたという見立てだ。

「AIのワークフローを単純化すると、製造業と同じ考え方ができます」と岡野原氏はいう。原材料は学習データで、工場は計算リソース、生産技術は学習ノウハウ、製品は学習済みモデルがというわけだ。学習データが少ないと良い製品はできないし、計算リソースが貧弱でもまた結果は同じというわけだ。

深層学習では、計算リソースが良いモデルをつくれるかどうかの競争要因になってきている。スーパーコンピューターの「京」は10ペタフロップス計算性能を持つが、今後、必要になってくる計算リソースはその1000倍以上、エクサのスケールになるという。

「私たちも計算リソースに多く投資していて、だいたい1200GPU、12ペタフロップス相当の計算資源を持っています。これをサービスに使うのではなく、研究開発だけに使っています」。

このような時代には、「とにかく早く試行錯誤すること」が大切だと岡野原氏はいう。試行錯誤するコストが劇的に下がってきているからだ。「うまくいかない」という経験を、できるだけ速く、多く経験してノウハウをためていくことが重要なのだ。

「研究を一段落して製品化に進むのでは、どうしても時間がかかります。研究のスピードが上がる中、できた技術をどのように世の中に適用していくか、研究段階から考えておく必要があるのではないでしょうか」と岡野氏は講演を締めくくった。

エンジニアが世界に与えられるインパクトは大きい

Indeedの出木場久征CEO

出木場氏の講演テーマは、「グローバルで活躍するエンジニアの仕事とは」。出木場氏が「エンジニアで仕事するぞって決めている人は? エンジニア以外で少しビジネス寄りの仕事をしてもいいかなと思っている人は?」と会場に問いかけると、「エンジニア」「ビジネス寄り」がおよそ半々だった。

出木場氏はリクルートで「じゃらんnet」「ホットペッパービューティー」などにおいて紙媒体からWebメディアへのトランスフォーメーションを成功に導いた後、投資部門に移り、2012年に求人検索エンジンのIndeedを買収。その後、自身がIndeedのChairmanに就き(現在はCEO)、アメリカのテキサス州・オースティンに移り住んだ。

買収当時のIndeedは社員数300人ほどの会社だったが、現在は、世界60ヶ国以上、28言語でサービスを展開しており、5000人規模の社員が働いているという。

「いまIndeedでは、1日に取れる検索データが25テラバイト、クエリ数は月に120億回、月間ユーザーがグローバルで2億人くらい。求人企業は40万社以上にのぼり、アメリカの被雇用者の65%はIndeed経由という調査もあります」。

出木場氏は、これからキャリアをスタートする会場の学生たちに向けて、会社を選ぶときに重視すべきポイントとして、「いいビジョンを持った会社」「伸びている会社」「グローバルな会社」の3つを挙げる。

アメリカでは現在、ビジョンと、どういう社会課題を解決していくのかをまず決める会社が多く、そこから「技術」を獲りに行くのだと出木場氏はいう。機械学習のエンジニアは取り合いになっており、「その技術で何をするのかわからないような会社」を買収し、手に入れてからビジョンに当てはめていくのが潮流だそうだ。

「Indeedのミッションは、『We help people get jobs.』というシンプルなもの。このビジョンの実現に向けて、膨大なデータをいかに機械学習にかけてサービス・プロダクトに反映するか、ということ『だけ』を考えているHR系の会社は世界唯一です」と出木場氏は胸を張る。

Indeedではあらゆるオペレーションに対して機械学習を適用している。例えば、現在1300万件登録されている会社の口コミ情報について、誹謗・中傷を載せないようにするために掲載可否を判断している。2012年に始めた時は、95%を目視で確認していたが、現在はほぼ100%、機械が判断している。セールスについても、どのタイミングで誰が顧客にコンタクトを取ると売れる可能性が高いかを、機械学習で判断しているという。

さらに講演では、Indeedのオースティンオフィス、東京オフィスで働く日本人に、「英語で困ったことは」「グローバルな会社で働いてよかったと思うことは何か」を聞いたインタビュー動画を見せ、「グローバルな会社」の現場を紹介した。

Indeedの日本オフィスは、日本人の割合が2割ほどで、社内で使うのはすべて英語だという。動画からは、理系出身の日本人が英語と格闘しながらグローバルな環境で働く様子や、技術者としてのバックグラウンドを持ちながらも、ビジネスサイドで投資部門・プロダクトマネジャーとして働くことの楽しさが感じられた。

インタビュー動画では、グローバルな会社で働いてよかった点として、自分の仕事が世界中に反映される「インパクトの大きさ」への言及が目立った。東京オフィスに限らず、Indeedのすべてのエンジニアはグローバルプラットフォームの仕事に関わることができるそうだ。

AIが実世界の社会問題を解決するまで

イベント後半は、出木場氏と岡野原氏によるトークセッションが開かれ、事前に参加者から募った質問や、会場からの質問に答えた。

「AIの現在の課題と今後についてどう考えていますか」の問いに対し、岡野原氏は、情報の世界と実世界とのギャップを挙げた。

バーチャルな世界で、情報をコンピューターが判断して最適化することはできるようになってきた。ただ、地球の裏側の人とテレビ会議はできても、実際のモノをそこへ届けるのは大変なように、実世界へ適用する上でのハードルは高い。

「私たちは、『実世界の問題』に特化しています。技術そのものでは差別化が難しい。あくまでも、手に届く製品を作り、提供することで、世の中の問題を解決することを第一に考えています。社会に及ぼすインパクトの大きい問題を解いていきたい」と語った。

学生たちのキャリアへの関心も高く、いくつかの質問が飛んだ。「AIが社会に実装されていく中で、どのような考え方やスキルが必要ですか」という質問に対する出木場氏の答えは、「好奇心」。

「技術の進歩は驚くほど速く、覚えたことがすぐに役に立たなくなります。エンジニアに限らず、どのポジションにいても、勉強し続けなければならない。そのような中で、いろいろなモノに対して、いかに好奇心を持ち続けるかが大事です」と話した。

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畑邊 康浩 [Yasuhiro Hatabe]日本版 ゲスト寄稿者
フリーランスの編集者・ライター。語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集、社内SEを経験。その後人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。2016年1月からフリー。
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