KADOKAWA Technology Review
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George W. Bush Helped Make Texas a Clean-Energy Powerhouse

ブッシュ家は石油業界寄り?
実は風力発電の貢献者です

テキサス州が再生可能エネルギーの先端州になれたのは、石油業界よりと見られるブッシュ知事(元大統領)のおかげだった。 by Michael Reilly2016.08.30

テキサス州が、クリーンエネルギー関連で掲げた目標を早々に達成し、さらに上を目指そうとしている。1999年、テキサス州のジョージ・W・ブッシュ知事(当時、後に大統領)が州の電力市場規制緩和法に署名して以来、風力発電用の風車は猛烈な勢いで建設され続けている。クリーンエネルギーは、米国政府の助成金と、風力と太陽光発電による低コスト化の追い風を受けており、当分は止みそうにない。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じているように、ブッシュ知事は、1999年の法律に、再生可能エネルギーによる発電量を2009年までに2000メガワットにするよう求める条項を盛り込んでいた。この目標は、予定より4年も早く達成された。後任のリック・ペリー知事は目標値を1万メガワットに引き上げ、2025年までに達成することを目標にした。

テキサス州は、この目標もあっという間に達成してしまった。2016年4月時点で、テキサス州の再生可能エネルギーによる発電量は、なんと1万9000メガワット(400万世帯分の電力使用量を充分にまかなえ、テキサス州の総エネルギー消費量の約16%に相当)に達したのだ。その大部分が風力による発電量(ほぼ1万8000メガワット)で、米国内でダントツのトップだ。

ただし、再生可能エネルギーの大ブームの裏側には問題もある。まず、テキサス州の送電網の容量はほぼ限界に達しており、風力発電が生み出した電力を、生産地である非都市部から、需要地である都市部まで送らなければいけない。新設された送電線は確かに役立っているが、風力発電量は現在も増え続けている。さらに、新しい風力発電所の建設を目指す大型計画(約6000メガワット相当の発電量が追加される見込み)もいくつか進んでおり、送電網がボトルネックになる問題は今後も残る。

また、風力や太陽光といったエネルギー源は不安定で、風が吹いた時だけ、あるいは日が差した時にしか、電力を得られない。難しい問題だが、電力会社は対策を探している。たとえば、送電網全体で使えるバッテリーと優れたソフトウェアと組み合わせ、あたかも需要にあわせて発電され、送電されるシステムを構築し、発電量の急な増減を抑える方法も検討されている。もし従来型のリチウムイオン電池でバッテリーに蓄える量を増やすのに費用がかかり過ぎるなら、別の方法が常に残っている。見捨てることにした石油や天然ガスを活用し、エネルギーを調達するのだ。

(関連記事:Wall Street Journal, “In Texas Oil Country, Wind Is Straining the Grid,” “Texas and California Have Too Much Renewable Energy,” “Virtual Power Plants Get Around Solar Power’s Intermittency Problem”)

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クレジット Photograph by Michael Gil | Flickr
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
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