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知性を宿す機械 Three Grand Challenges for Brain Science That Can Be Solved in 10 Years

脳科学の3つの課題

神経科学者が、近い将来に解決できる脳科学の3つの重要問題を策定した。 by Emerging Technology from the arXiv2016.09.01

人間が人間の脳をどこまで理解できるのかは、科学的な難題のひとつだ。世界中の研究チームが、猛スピードで、脳のコネクトーム(細胞間のつながり)から脳の計算の仕方、脳疾患の本質、脳疾患のより良い診断と治療方法まで、あらゆることを調べている。

だが、こうした作業を寄せ集めて達成可能な目標を設定しても脳の理解は飛躍的には深まらない。そこで世界の脳科学界は、8月の終わりに、重要な共通目標に関する作業の調整方法をニューヨークで検討した。

もちろん、正確に今後の目標がどうあるべきかは、誰も知らない。したがって、もっとも重要な未解決問題とは「脳科学者はどんな大きな課題に焦点を当てるべきなのか?」になる。

今年前半に、世界で最も影響力のある神経科学者が多く集まったブレインストーミング・セッションが開催されたおかげで、答えはもうある。このレポートが注目に値するのは、名を連ねたのが、米国立衛生研究所、国立神経疾患・脳卒中研究所のストーリー・ランディス元所長、マックス・プランク神経生物学研究所のヴィンフリード・デンク所長、スクリプス研究所のホリス・クライン教授(神経科学)、ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授(遺伝学)など、立派な経歴の持ち主の科学者ばかりだからだ。神経科学者は、今後10年で達成可能で全世界の神経科学界の焦点となるべき3つの大きな課題を設定し、その内容をようやく公表した。

第1の大きな課題は、何が脳をユニークなものにしているのか理解することだ。神経科学では、脳の構造が、生物種内でも生物種間でも大きく異なることが知られている。多様性は、脳の生体構造(生化学と結合性)にも、発達の仕方や発達プロセスに関わる遺伝子発現にも現れる。

「多様性を支配するデザイン原理を理解することが、多様性が脳の健康と機能に与える影響はもちろん、知性と主観的体験を理解する鍵を握っているかもしれない」とブレインストーミングのチームはいう。

そこでブレインストーミングのチームが提案する大きな課題は、準備作業として、さまざまな生物種間の多様性を「解剖学的神経地図」として作成することだ。ブレインストーミングのチームは「10年以内には、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、マーモセットなどに限らず、脳の多様性に関する課題に対処し、また大規模な神経地図を作成して分析するツールを開発しているだろうと、私たちは見ています。その結果は、一通り注釈の付いたデータを伴う最新の『バーチャルな神経動物園(Virtual NeuroZoo)』であり、分析と発見のための分析的ツールになるでしょう」という。

2つ目の大きな課題は、脳はどのようにして、険しい地形を突き進んだり、翻訳したり、心の状態を認識したりといった、生活の中で起きる複雑な計算問題を処理しているのか突き止めることだ。長年の問題だ。世界で最も強力なコンピューターが、圧倒的な処理能力と大量の電力を消費しても、この問題の対処に難儀する一方で、脳は毎日、お粥1杯ほどのエネルギーで、こうした作業をこなしてしまう。

脳はどのようにして高度な処理を実現しているのだろうか? 熱心な脳の研究者は、異なる脳の構成部位がどのように複雑な行動を調整するために連携するのか研究することを提案する。研究室ではなく、自然環境で検証できる新世代の実験が必要だろう。さらに、この提案を解決するには、さまざまな規模で脳のメカニズムを研究する協調努力も必要だろう。またそうすることで、異なるチーム同士がその取り組みを調整するのに密接に協力していく必要もあるだろう。「このような実験は、現在のコンピューター・システムでは実行できない計算タスクをやり遂げる可能性を秘めた、神経系のマルチスケールのモデルを生み出すでしょう」とブレインストーミングのチームはいう。

最後の課題は、脳疾患の診断と予防のために、また、脳が障害を受けた時の機能回復のために、研究成果の情報をどう使うべきかだ。この取り組みのほとんどは、どのようにして神経機能は正常に機能しなくなるのかの理解を深めることに集中するだろう。しかし改善された知識は、臨床的意思決定を向上させるツールとして変換される必要もあるだろう。

ブレインストーミングのチームは、世界の神経科学界のために、もうひとつの目標も定めた。世界的規模で共同研究するための技術的インフラを構築することだ。このインフラは、国際宇宙ステーションに敬意を表して(ブレインストーミングのチームが賞賛する対象だ)、国際脳ステーション(IBS:International Brain Station)として知られるようになるだろう。IBSは、基本的には、クラウド・コンピューティング・プロジェクトであり、研究員が収集、保存、分析したデータは誰でも利用できる。

非常に野心的な計画だが、詳細は不明点が多い。たとえば、10億ユーロもの資金が拠出されているヨーロッパのヒューマン・ブレイン・プロジェクト(Human Brain Project)の役割だ。IBSはHBPの競合なのか、延長なのか、随伴プロジェクトなのか?

IBSの費用はどうなっているのか? ブレインストーミングのメンバーは(ブレインストーミングの会議は、全米科学財団(National Science Foundation)とカブリ財団(Kavli Foundation)の後援)、IBSの予算規模や出資者を明らかにしていない。

この観点では、国際宇宙ステーションは目指すべき最良の例ではないかもしれない。ISSの費用は1500億ドル以上で、2位に大差を付けて、世界で最も高額な機械だからだ。

恐らく、こうした問題は、9月19日にニューヨークで開催される「Coordinating Global Brain Projects」カンファレンスのために、意図的に残されたのかもしれない。

全世界の脳科学界が同意するかどうか、興味をそそられる。

参考:arxiv.org/abs/1608.06548:グローバルな脳科学に関する大きな課題

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