KADOKAWA Technology Review
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労災隠しが横行か?
テスラ元従業員らが証言した
「未来の工場」の驚きの実態
知性を宿す機械 Tesla says its factory is safer—but it left injuries off the books

労災隠しが横行か?
テスラ元従業員らが証言した
「未来の工場」の驚きの実態

イノベーションの旗手ともてはやされるイーロン・マスク率いるテスラの自動車工場では、相次ぐ事故で混乱が起きていた。40人もの元従業員や同社関係者へ取材したリビール(Reveal)による調査報道を掲載する。なお、この報道をきっかけにカリフォルニア州当局はテスラに対して労働環境の調査を開始している。 by Alyssa Jeong Perry2018.05.24

X-Menに登場するキャラクターの名前を付けられた巨大な赤いロボットが自動車部品を空中に持ち上げ、従業員がアルミ製の車体に黒いタイヤを取り付けている。フォークリフトや牽引車が、灰色に塗装されたフロアを勢いよく進む。

歩行者用通路とは色調に差があるとはいえ、カリフォルニア州フリーモントにあるテスラ(Tesla)の電気自動車工場の床は灰色一色だ。

工場では深刻な衝突事故が起きており、明確に認識できる歩行者通路がないことを憂慮した総合組み立てラインの当時の安全専任者は、危険を示す警告色として従来から使われてきた黄色を使うべきだ、と上司に進言した。だが、それに対する返事は、「イーロンは黄色を好まない」だった。

最先端のテクノロジーと世界を救うビジョンの融合は、テスラの大きな売り物だ。安全部門の指導員ジャスティン・ホワイトをはじめとする多くの人たちは、大きな力を持ち、今や画期的なロケットの打ち上げを成功させたイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)に刺激されてテスラで働く道を選んだ。

ホワイトやその同僚が目の当たりにしたのは、安全性よりも独特な方法やスピードが優先される、無秩序な工場フロアだった。手っ取り早い方法を正当化したり、懸念を否定したりするために、しばしばマスクCEOの名前が引き合いに出されたという。

度重なる工場内での労災事故への非難が高まる中、最近になってテスラは2017年の労災頻度が大きく下がったことを喧伝した。従業員100人あたり約6.2件という、自動車業界平均相当まで下がったというのだ。

だが、テスラにおける実状は、必ずしもそうではない。リビール(Reveal)の調査では、法的に義務付けられた報告書において、複数の重大な負傷事故の記載を怠ったことが判明している。労災事故の件数を実際の件数よりも少なく見せていたのだ。

2017年4月、タリク・ローガンは、工場で使っていた有毒な接着剤が気化したことによって、衰弱性頭痛に悩んでいた。ローガンは母親に対し、「本当にひどい頭痛がしていて、何かがおかしい」とメッセージを送った。

ローガンは激しい痛みに耐えられず働けなくなり、その痛みに何週間も苦しんだ。

だが、吸入による傷害と診断されたローガンのケースは、州法および連邦法によって企業に義務付けられた正式な労災記録に記されることはなかった。また、別の工場従業員の、捻挫、過労、反復的な圧迫による負傷・傷害の報告も、記録されることはなかった。

リビールが入手した社内記録によると、報告書に記載する代わりに、会社の幹部はそれらの負傷を個人的な健康上の問題または応急処置だけで済む軽微な事故と分類していた。

労災事故件数を実際よりも少なくしたことは、テスラにおけるより根本的な問題を示す1つの症状だ。2017年にテスラを退職した、環境・労働安全衛生チームの5名によると、テスラは安全面よりも電気自動車の生産を優先させているという。結果として、従業員は不必要に危険な状況に置かれていると、5人は証言した。

あるときホワイトは上司に対して、爆発事故が発生する危険性について警告したが、生産ラインの停止が必要なことを理由に、生産管理者は問題の解決を先延ばしすると告げた。

2016年9月から2017年1月まで、ホワイトはテスラの総合組み立てラインで働く何千人という従業員の安全を監視し、労災への対応、労災報告の検討、安全講座による指導、工場の危険評価を担当していた。

「あらゆることが生産より後回しでした。誰かが命を落とすのは時間の問題でした」とホワイトはいう。

時価総額約500億ドルのテスラは、1万人を超える従業員をフリーモント工場で雇用している。目覚ましい成長を遂げる一方で、従業員は機械で切断され、フォークリフトに粉砕され、電気爆発で火傷を負い、融けた金属を浴びせられてきた。2017年、テスラは1日あたりおよそ2件となる722件の労災事故を記録した。休業または作業制限が必要な重大な労災事故の割合は、2016年の業界平均よりも30パーセントも悪いものであった。

急激な成長、絶え間ない変化、手ぬるい規則は、上級管理職が逆らうことを恐れるCEOの存在と相まって、従業員の安全のために立ち上がる人がほとんどいない雰囲気を作り出したと、環境・労働安全衛生チームのメンバーだった元従業員は語った。

さらにマスクCEOは「黄色」に加えて、多すぎる工場内の標識やフォークリフトがバックする際に出す警告音を毛嫌いしていると言われていたという。マスクCEOの好みは周知され、標準的な安全標識を減らすことにつながったとも元従業員は証言している。

「もし誰かに『イーロンはそれが嫌い』と言われれば、仕事を失う可能性があることを心配していました」と、環境コンプライアンスの元マネージャー、スーザン・リグメイデンはいう。

入社から2、3カ月が経ったころ、ホワイトは非常に危機感を募らせて「事故のリスクが高すぎます。毎日誰かが怪我をしていて、危うく車に潰されたり、轢かれそうになったりしている状況は看過できません」と、人事部長にEメールを送った

ホワイトはその翌日、安全チームのリーダーは危険に対処できていないと、マスクCEOの側近であるサム・テラーCEOオフィス室長にもEメールを送った

「安全のことを考えると夜も眠れません。テスラでは安心して眠れないことを告白しなければなりません」とホワイトは書いた。

CEOオフィスからの返事はなかった。ホワイトは部署を移り、数カ月後には幻滅して会社を辞めた。

テスラの担当者は、「ホワイトの主張はすべて根拠のないもの」として退けた。会社は労災事故を正確に記録しており、従業員の安全を極めて重要視している、と主張している。その証拠に、最近実施した匿名の社内調査で、社員の82%が「テスラは社員の健康、安全、福祉に真摯に取り組んでいる」と回答したと述べた。

この記事が発表される前、記事は進行中の労組結成の動きを助ける道具であり、さらに「テスラおよびテスラで働くことが実際にどのようなものであるかについて、完全に誤った事実」を書いているとして、テスラの広報担当者はリビールを非難する声明文を送った。

「当社の考えでは、調査報道として書かれている記事は、実際には組合支持者と直接協力する過激派組織によるイデオロギーに動機づけられた攻撃であり、テスラに対する計算された偽情報のキャンペーンを展開しようとするためのものです」。

テスラの広報担当者は、黄色く塗られた工場内のレールと柱の写真も送りつけてきた。

リビールは、現職と退職した社員・幹部40人弱にインタビューし、何百ページもの書類を調査している。リビールに話をしてくれた従業員の中には、労組結成の取り組みを支援してきた者もいたが、リビールが個別に接触を図った他の従業員は、労組結成活動に関与していない。

無秩序な工場フロア

テスラは、元社員の言葉を借りれば「アイアン・マン(注:CEOのイーロンにかけた皮肉)のために働くのが好き」という最先端の機械を自慢している。しかしその一方で、きちんと設計や整備がされていない吊り上げ機を信頼して重い自動車部品を持ち上げた結果、度重なる事故が発生したと、安全チームの元メンバーは話す。

テスラには初の大衆市場向け新セダン「モデル3」(価格は3万5000ドル)の増産という、大きなプレッシャーがかかっている。当初マスクCEOは、2017年末までに月産2万台と発言していたが、その後、月産1万台と半減した計画さえも約束を果たせなかった

テスラはよく狂ったような生産状態になると、リビールのインタビューを受けた元社員の多くが語った。出荷のためにに、とにかく急いで次善策がひねり出され、1日12時間勤務の連続、設備の故障、不十分な技能研修に直面したという者もいた。

そのドタバタは、文字通り安全衛生に関する手続きが、ときにおざなりになることを意味した。2017年、建設作業員が新しいモデル3の組み立てラインを作るために建物のコンクリートを壊したが、初めに粉塵の抑制や試験をしなかったため、がんを引き起こすシリカ粉塵が撒き散らされたと、リグメイデンほか2名の安全衛生チームの元メンバーが語った。

生命や身体が危険にさらされるにもかかわらず、元テスラの安全専任者は、安全教育はひどく不十分であったと語った。テスラは、すべての従業員が少なくとも4日間の研修を受けると話している。しかし、新規採用の従業員は往々にして、生産ラインの空きを埋めるために早々に研修を切り上げさせられたと、ホワイトや安全チームの別の元メンバーは話している。

元チーム・メンバーたちは取材を受けることに躊躇したものの、現在および将来のテスラ従業員の状況を改善するのを手助けするために承知した。報復やキャリアが傷つくことを恐れて、匿名扱いを願い出た人もいた。

テスラ に対するインタビューで、2017年5月入社のギャビー・トレダーノCPO(最高人材責任者)は、元安全衛生専任者の証言に繰り返し疑問を呈し、「彼ら自身が仕事に失敗した」かもしれないとの考えを示した。

トレダーノCPOは、テスラ初の環境・労働安全衛生担当副社長として、ローリー・シェルビーを2017年10月に採用したことを大げさに話した。

「当社の門をくぐり、この工場に入って来るあらゆる人に対して、当社は責任があり、そして大切に思っています」(シェルビー副社長)。アルミ製造会社アルコア(Alcoa)で安全担当副社長を務めた経歴を持つシェルビー副社長は、「私は安全に対して情熱を持っており、そして安全とはつまり気遣いです」と語った。

テスラは、リビールの報道で明らかにされたことに逐一異議を唱えた。従業員がシリカ粉塵に晒されたという情報はなく、定期的に空気のモニタリングをしていると述べた。また、一部の吊り上げ機に故障があり、従業員が怪我をしたものの、設計や整備の不備によるものではなく、故障した吊り上げ機は修理されているとも話している。

トレダーノCPOとシェルビー副社長は、噂されているようなマスクCEOの美的な好みについては聞いたことがないと語り、工場には実際に黄色が使われていることを指摘した。2人とも、自身の着任前に起きてたことには触れなかった。シェルビー副社長の前任者として安全チームを担当していたセス・ウッズからは、問い合わせに対する回答はなかった。

テスラで労災事故にあったデニス・クルーズは、今でも生産ラインへの復帰を希望している人物だ。

一時、仕事に起因する腱炎のために、労災保険の給付金で生計を立てていたクルーズは、家賃を支払えなくなり、しまいには車の中で生活することとなった。その後、2016年の後半に、多くの従業員が不満を漏らしている有害な接着剤が目の中に入り、角膜に損傷を負った。さらに9月には、品質検査を担当していたクルーズは、車体から発生した火災を消火する際に、燃焼する化学物質の煙を吸い込んだ。

現在42歳のクルーズは、息切れ、咳の発作、頭痛に苦しんでおり、負担の少ない業務に就いている。だが、家族を養うため、スキルを活かして昇進することを望んでいる。

「労災の給付金では家族を養いきれません。工場から離れてもそうです。だからこそ、生産ラインに戻ろうとしているのです。私はあの火中に戻ろうとしているのです」。

労災事故件数の差

テスラの社内労災事故追跡システムに、ある管理者は次のように入力した。2017年2月、従業員の1人が「作業中のワイパーモーター設置で、左腕を痛めた」ため、出社できなかった。「チームメンバーがグループで作業をしているとき、不快なほどに暑くなった」ため、従業員一人が「失神して、床に頭を打ちつけた」。さらに管理者が「現場では大いに信頼されていた」と指摘する別の従業員は「不適切な人間工学的プロセス」を繰り返したことで、肩を負傷した、とも入力した。

テスラは、休業、業務制限といった、応急処置以上の治療におよぶすべての業務上の事故の報告を法律によって義務付けられている。

だが、それらの労災事故は「個人的な健康上」のケースに分類され、仕事とは何ら関係がないことになった。このため、テスラが法的に義務付けられた報告に自社の労災事故を集計した際、それらのケースは含まれなかった。

さらにリストは続く。ある従業員は、箱を取ろうと手を伸ばした際に背中の痙攣を起こし、また別の従業員は作業テーブルに物を運んでいる際に背中をねん挫した。さらにシーラー(塗装下地用塗料)を塗ろうと前屈みになった際に背中に痛みが走り、その痛みを解消できなかった従業員もいた。

法律では、職場における作業の何かしらが負傷の一因となった場合、作業が唯一の原因でなかったとしても、労災件数に数えなければならないとしている。

だが、元テスラの安全専任者は、同社が負傷者の分類を意図的に誤ることで、組織的に負傷件数を実際よりも少なく集計していたと語った。

「骨折や裂傷といった負傷があったのに、記録できないと言っているところを目撃しました」と元安全専任者は匿名で話してくれた。「『うわっ、これはひどい』といったことがたくさんありました」。

リビールでは、情報筋から入手したテスラの社内追跡システムの記録と、従業員から提供された公式記録とを比較した。

リビールによって提示された12件の事例では、テスラはそれらを件数に含めないとしている。テスラは、従業員は業務が原因で負傷したと思い、管理者も同様に考えた可能性はあるとしている。しかし、後になって医療専門家(多くの場合、テスラと契約あるいは提携関係がある)が、業務とは関連性がないと判定したとのことだ。

「テスラは適切な記録管理をしていると確信しています」とシェルビー副社長は述べた。

リビールは、テスラの公式労災記録をかつて分析した、オークランドに拠点を置くNPO法人ワークセーフ(Worksafe)のダグ・パーカー事務局長に、テスラの労災事故に関する社内の説明とともに、個々の対応事例を見せた。

「提供された事例は、とても心配なことです。報告すべき職場におけるすべての労災事故を、テスラが報告していない可能性を示すものです」。

カリフォルニア州労働安全衛生局は、2013年以降の40件を超える違反でテスラを法廷に召喚している。2016年のテスラにおける休業または業務制限を要する重傷事故の比率は、業界平均よりも83%高かった。それ以来、テスラは「世界で最も安全な自動車工場」を目指し、状況を好転させているという。

2017年マスクCEOは、全従業員に宛てたEメール株主総会で、テスラの労災事故率が業界平均よりもずっと低かったと主張した。テスラのブログには、労災事故率が業界平均になることは「後退を意味する」とも書かれていた。

その後、テスラの状況は明らかに反転した。

「2017年のデータでは、当社が業界平均にあることが示されており、そのことを嬉しく思います」とシェルビー副社長は語ったが、先の「労災事故率が業界平均になることは後退」という主張は「一時的な事象」であると説明した。

またマスクCEOは、2017年に従業員に向けて送ったEメールに、安全チームと毎週、会合をしていると書いている。さらに「事態を好転させるために、何をする必要があるかを正確に理解したい。負傷した人が回復したら早急に1人1人に会いたいと思っています」とも書いている。

トレダーノCPOは、マスクCEOが実際に負傷した複数の従業員と会ったものの、毎週の安全チームとの会合は、もう必要ないため開催していないと語った。

「現時点でマスクCEOは、負傷したすべての従業員には会っていません。ただし、私は負傷したすべての従業員に会うことは不合理だと考えています」とトレダーノCPOは話した。

複数の環境・労働安全衛生チームの元メンバーは、テスラの公式発表を疑う理由があると語った。

たとえば、テスラは工場の派遣労働者の事故を数字に含めていない可能性があるという。テスラでは、複数の工場を派遣労働者ばかりで構成し、後になって正規従業員への転換を提示することがある。テスラのように派遣労働者を監督する企業の場合、その事故も数に含めなければならない。

「それが法律の定めるところです」とシェルビーCPOは認めた。「当社のデータを見直した限り、常にそうしていますよ」。

だがあるとき、ホワイトが上司に、労災事故率が実際よりも低いと思われる理由を尋ねたところ、派遣労働者の事故は数に入れていないと言われたという。

「上司は誤った数字を報告していることを知っていました。派遣社員は工場フロアで負傷しながら、数には数えられていないことを知っていたのです」(ホワイト)。

テスラは2017年にその問題の修正を始めたと元従業員は話すが、どの程度解消しているかは不明だ。

2017年、従業員がテスラの労災事故記録を要求した後、テスラは元々の2016年報告書を修正して、以前は含まれていなかった135件の事故を追加した。派遣会社とテスラが共有していなかった労災事故が判明したため、数字を変更したとテスラは弁解している。

職場の有害化学物質

2017年4月、派遣労働者のタリク・ローガンは、ヘンケル(Henkel)のエンジニアリング接着剤「ロックタイト(Loctite)AA H3500」を使ってテスラのバッテリー・パックに部品を取り付ける作業を割り当てられた。この強力な接着剤には、アレルギー反応や場合によっては遺伝子異常を引き起こす可能性がある有害な化学物質が含まれている。ローガンと元同僚は、十分な換気や揮発物から保護されない状態で、毎日100本以上の接着剤を使っていたそうだ。

ローガンの症状は、最初はめまいがして、その後にこれまでに感じたことがないような激しい頭痛が襲ってきた。

「ローガンは我慢強い子です」と母親のトニ・ポーターは話した。「そんな彼が泣き叫ぶほど、恐ろしいことでした」。

テスラは、当時23歳のローガンを病院に紹介し、そこで「頭痛、めまい、呼吸困難を引き起こす自動車用接着剤への急性反応」という診断を受けた。医師はローガンに鎮痛剤を処方し、接着剤を使う作業を避けるように伝えた。

ローガンは当時、「まだ頭痛がするんだ。とっても痛い!!!!!!!」とのメッセージを母親に送っている。

ローガンは仕事を休み、複数回通院することになった。テスラは勤怠状況を理由に、ローガンの正規従業員としての雇用を断った。

テスラはリビールからの質問に対する回答で、ローガンの痛みが業務に関係しているとの医師の診断に同意していないと述べた。いずれにせよ、ローガンの痛みは治療を要するものではなかったので、労災事故の数字には含めないと述べた。

だが法律では、単なる鎮痛薬の処方(リビールが入手した医療記録に記載されていた)であっても、ローガンの症状を労災事故に含める必要がある

テスラは、ローガンが扱ったのはごく少量の化学物質で、曝露レベルは基準内であったとしている。さらに、医師に行くまでに1カ月かかっており、それまで頭痛に関する症状を訴えなかったとも述べた。

この発言は、ローガンが頭痛が始まって1週間後に医師の診察を受けた医療記録や、ローガンの上司がテスラの労災追跡システムに入力した内容と矛盾している。

匿名扱いを求めた安全チームの元メンバーは、テスラが従業員に対して、現場の化学物質に対する反応は、個人的な健康上の問題であると伝え、従業員たちを治療することはなかったと語った。

「現場では何に晒されているかを知らない従業員がおり、誰も彼らの面倒を見ていません。悲しいことです」。

ある従業員は社内記録の中で、テスラの看護師に対して「エリア内の揮発性物質に対する懸念を表明し、死に向かっているように感じると話していました」と説明している。この件は「看護師である自分のスキルを超えています」と記載されたメモが付けられたが、個人的な健康上の問題とされた。

シェルビー安全担当副社長は、テスラは徹底的に化学物質の曝露に関して確認をしており、「曝露制限を超えている場所はありません」と語った。

今年、規制当局はテスラに対し、化学物質の危険性に関する「職場の有効な評価」ができていないとして法廷に召喚した。これに対しテスラは不服を申し立てている。

見殺しにされる従業員

仮にテスラが改善をしていたとしても、車体に塗料を噴霧するロボットの整備をする工学技術者として2017年にテスラに入社したアラー・アルカファーギにとっては、十分に迅速な対応ではなかった。アルカファーギは、塗装部門に特化した安全指導は何も受けていないと語った。

2017年の秋、当時27歳のアルカファーギは、塗装ブースの下で、詰まったホースから余分な塗料を除去するよう指示された。

ブースに降りる方法が分からなかったアルカファーギと同僚は、金属製のフローリングの一部をのぞき込んで飛び込むしかなかった。そして、足が塗料にとられ手を前にして倒れてしまい、頭と腕を激しく打ちつけた。拳を握ることができなくなり、仕事に戻れず、労災給付金を申請した。

この事故が、テスラの公式労災記録に記載されることはなかった。テスラは当初、アルカファーギが応急処置しか受けなかったために、この件は記録されなかったと回答した。だが、アルカファーギが通常業務に戻れないという事実から、労災件数に含まれるべきなのは明白だ。

「あれは事故以上のものでした。誰も適切な訓練を受けていませんでした」(アルカファーギ)。

テスラは、アルカファーギの怪我を受け、それ以降は特別に研修を受けた従業員のみが塗装業務をするようにしたと述べた。

適切な研修の欠如が工場全体の問題だったと、3つの異なる部門の従業員を監督したロジャー・クローニーは話す。

工場勤務経験のないある新入社員は、アルミニウムを融かして部品に成形するダイカスト工程に送られたが、その業務固有の基本研修はなかったと、クローニー元次長は語った。1200℃の融けた金属を使って作業することを知らない者もいたという。

テスラの工場は、クローニー元次長が8年間働いていたオハイオ州にあるゼネラル・モーターズ(GM)の工場とは、大きく異なっていたという。そこでクローニー元次長は、自ら進んで独自の研修プログラムを開発することにした。2012年にテスラにやって来てまもなく、液化した金属の熱風で顔と手を火傷し、安全を真剣に考えるようになった。しかし他の管理者はそうではなかったとクローニー元次長は語る。

「多くの従業員がやって来て、見殺しにされました」とクローニー元次長は証言した。

2017年3月、クローニー元次長は、差別的な扱いが横行していることを訴える書面を添えてテスラを辞めた。黒人であるクローニー元次長は、自分より経験の浅い白人が何人も昇進して追い越され、自身は次長から一般管理者に降格された。

テスラは声明で、クローニー元次長は書面や退職面接で人種差別に言及していないと述べた。クローニー元次長が米国雇用機会均等委員会(EEOC)に対して、テスラにおける人種差別の存在を主張している。

リビールの調査報道によると、州の安全規制当局は不十分な研修を理由に、テスラに対して2017年の2回を含む計8回法廷に出頭を命じている。

テスラは、新しく入ったすべての製造従業員が1日はオリエンテーション、もう1日は座学による指導、あとの2日間は道具類の扱い方の実地研修をして、負傷者の発生を回避していると自社の研修計画の正当性を主張した。モデル3を製造する従業員は、コンピューターを使った2日間のバーチャル訓練を追加で受けている。

「4日間というのはかなり集中した研修です」とトレダーノCPOは語った。「その後、研修は継続して実施されるので、研修は従業員にとって中心的な存在です」。

反復的なストレスによる負傷

テスラの幹部は、反復的なストレスによる労災が従業員に最も起こりやすいことを認め、新しいモデル3の組み立てラインに導入した人間工学的な改善を強調している。

「実際にラインを再設計したので、従業員にとってより安全になっています。組み立てラインにあるモデル3の生産が、どれほど簡単になったかを眺めるのはとても心地よいものです」(シェルビー副社長)。

だがテスラは、記者にその組み立てラインを見せようとはしない。

かつての従業員たちは、テスラの別の車種を製造する際、時間を節約するために、自分の身体を犠牲にしなければならなかったと語る。たとえば、ある従業員は負荷を軽減するために設計された補助機械の動きが遅すぎたので、重たい自動車のシートを肩の上まで持ち上げていたと、ジョエル・バラッザ元製造担当は語った。

「従業員は『ああ、早く片づけなくては』といった感じで、シートを運ぶのです。私自身もシートを運びました。従業員が動いて当たり前とされていたのです。動き続けろ、動き続けろ、ラインを止めるなという感じです」(バラッザ)。

かつて安全チームの責任者であったホワイトも、従業員が自身でシートを持ち上げることがあったと話したが、テスラは声明で、そのようなことはないと述べている。

2017年秋、バラッザはほかの何百人という従業員とともに解雇された。テスラは業績に問題があったので一斉に解雇したとしているが、一部の従業員はコスト削減のレイオフか、組合支持者を罰するためのものだと反論した。

バラッザは、自身や他の従業員がシートを持ち上げる反復動作によって背中を傷めたものの、不平を言う者に対して「上司が『ああ、ちょっと面倒くさい奴だ』という感じ」になるので、ほとんどの人は何も言わなかった証言する。

2017年の従業員に関する報告は、何年か前に負傷した従業員のそれとあまり変わっていない。2014年、マーク・エバーリーはテスラの工場による労働が原因の手根管症候群と診断された。エバーリーはほぼ連日の12時間労働で、自動車のホイールハウスに何千というびょうを溶接して、手がおかしくなったと話す。手術が必要で、仕事を失い、何年も労災給付金を受けることとなった。

「何をやるにしても、急げ、急げ、急げでした。数字を達成できなかったら文句を言われました」(エバーリー)。

ホワイトカラーの従業員にも、プレッシャーが大きくのしかかることがあった。

フリーモント工場の事務職で上級アナリストだったアリ・カーンは、米国証券取引委員会(SEC)によって義務付けられている決算報告の準備をしていた。2016年、事務所は人手不足となり、毎日少なくとも12時間働き、週末も休暇も休日も一切なかったと語る。

事務作業の反復動作によってカーンの手首は痛みはじめ、その痛みは腕、首、背中へと広がっていった。水の入ったコップを持つことも困難で、1歳の娘と一緒に遊ぶことができなかったとカーンは語る。

カーンは、自分の作業内容を人間工学に基づいた審査を求めたが、テスラの安全チームは忙しすぎて審査はできないと彼の上司に伝えてきた。

「上司には『もし休暇を取るなら仕事のペースが落ちて、あなたの評価に影響するだろう』と言われました」とカーンは話す。

テスラは最終的に、カーンを病院へ送った。医師は、仕事に関係する筋肉の緊張と腱炎であると診断して、繰り返し鎮痛剤を処方し、仕事の制限を指示したことが医療記録に記載されている。

つまり、カーンはテスラの労災記録に記載されなければならなかったが、実際は記載はされなかった。

それでも、医師が指示した休養はカーンには許されなかった。有利な条件のストック・オプションを失い、2016年8月、カーンは辞表を提出した。だが、症状はまだ回復していない。

「私の身に起こったことは防げるものでした。だからこそ憤りを感じているのです。すべてに対処可能だったのに、ただそうしなかっただけです」(カーン)。

この記事はザイヴァ・ブランステッターとエイミー・パイルが担当し、編集はナディア・ウィンターとニッキー・フリックが担当した。ウィル・エヴァンスへの問い合わせは、wevans@revealnews.orgまで、アリッサ・ジョン・ペリーへの問い合わせは、alyssaperry@kqed.orgまで。ツイッターでフォローする場合は、@willCIR@alyssajperry


訂正:5月24日06時59分公開時の17段落「2017年テスラは、2日間で722件の労災事故を記録した。」は「2017年、テスラは1日あたりおよそ2件となる722件の労災事故を記録した。」の誤りでした。訂正してお詫びいたします。(5月28日23時55分)

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