KADOKAWA Technology Review
×
スポンサード・バイ・@smatu.net Taku さん
この記事は有料会員限定記事ですが、会員のスポンサードによって無料で表示しています。
あなたも有料会員になりませんか? 有料会員登録
コネクティビティ Researchers wonder what it means when you keep your phone out without using it

あなたがスマホを「手に持って歩く」理由

パリを歩く成人約3000人の22%がスマホを手に持って歩く「フォーン・ウォーカー」だった。ただ、男女のペアはその率が低い。スマホを見せて持ち歩くのは社会的ステータスの誇示かもしれない。 by Emerging Technology from the arXiv2018.05.08

どんな世代も、どんな社会的・経済的集団に属している人も、日々の生活にスマートフォンを組み込んでおり、スマホは家庭や仕事の人間関係において重要なツールとなっている。驚くべきことではないが、スマホ革命は新しい人間の習性を生み出している。

イリノイ大学シカゴ校のローラ・シャポスニックとジェームス・アンウィンの研究のおかげで、スマホによってもたらされた人間の行動の1つを学べることになった。シャポスニックたちは、これまで観測されていなかった現象を発見し、それについて史上初の研究を始めたのだ。

彼らはこの新しい習性を「フォーン・ウォーキング」と呼ぶ。携帯電話を実際に使うわけではなく、長時間手に持ったままにしていることを指したものだ。この習性は歩行者の間で驚くほど一般的になっていることが分かっている。しかし興味深いことに、フォーン・ウォーキングをする程度は男性と女性でかなり異なっているのだ。シャポスニックとアンウィンは、なぜフォーン・ウォーカーが存在し、どうして性別による差が生じるのかを解き明かそうとした。

2人の研究者はまず、パリの中心部にある6つの場所で3000人以上の成人の歩行者を調べるところから研究を始めた。歩行者の半数強が女性で、サンプル全体の平均年齢の推定は約35歳だった。

研究チームは各人物を20〜30メートルの間に渡って観察し、性別、単独かペアかより多人数の集団の中の一人なのかを記録した。歩行者がスマホを持ち運んでいるのが見えたかどうか、もしそうだった場合はそれを使っていたかどうかもメモした。スマホを持っていて使っていなかった場合、その人物をフォーン・ウォーカーとしてラベル付けした。

そしてシャポスニックとアンウィンは、どのような種類のパターンが出てくるかを調べようと、データを徹底解析した。

興味深い結果が出た。観察した3038人の成人のうち、674人はフォーン・ウォーカーだった。全体の22%という驚くべき多さだ。

フォーン・ウォーキングの割合には男女間で顕著な差があった。男性のうち約20%がフォーン・ウォーカーであったのに対し、女性の場合は33%だったのだ。

さらに驚くべきことは、男女がペアで歩いている場合は、フォーン・フォーキングのあり方が変わることだ。

単独で歩いている人の場合、男性の30%がフォーン・ウォーカーだったのに対し、女性は37%だった。男性のペアは24%がフォーン・ウォーカーで、女性のペアは40%がフォーン・ウォーカーだった。しかし、男女のペアの場合は劇的に減少し、わずか18%になる。

実際、女性のフォーン・ウォーキングの割合は男性が同伴していることで約30%も落ちるのだ。男性が女性を同伴している場合の下落率は23%である。

男女のカップルがフォーン・ウォーキングをあまりしないのはなぜだろうか。シャポスニックとアンウィンはある見解を持っている。

重要な要因の1つとして挙げられそうなのは、その男女が恋愛関係にあるかどうかだ。以前の研究で、男女の歩行者カップルは交際している可能性が高いことが示されており、そのことがフォーン・ウォーキングに影響を与えている可能性があるとシャポスニックとアンウィンは指摘している。

フォーン・ウォーキングの理由は、社会的なプレッシャーが人々に一定時間の枠内にメッセージに返答することを要求しているからだ。「もし、常時展開し続けている会話の一部でありたいと考えているのなら、モバイルデバイスはすぐに使える状態になっていなければなりません」とシャポスニックとアンウィンは述べる。「スマホが使える状態にあってコミュニケーションを受ける準備ができていることを、自分自身に対して明確にしておくだけでなく、周囲の人々に対しても明確にしておきたいという共通の要求があるのです」。

なぜ多くの人がフォーン・ウォーカーであるか、これで説明できそうだ。

研究によれば、テキスト・メッセージを送り合っている恋人同士は5分以内に返事が来ることを期待している。だが、パートナー同士で実際に会っているときであれば、当然そのプレッシャーは低くなる。

シャポスニックとアンウィンは、男女カップルのフォーン・ウォーキング率が低いのはこれが理由だという。一緒に歩いているのだから、パートナーからのメッセージを携帯電話でチェックし続ける必要はない。「観察した同性のペアのごく一部は真剣な恋愛関係にある可能性があります。これも、同性のペアでフォーン・ウォーキングの率が低下する説明になるかもしれません」。

ペアで歩いている人のフォーン・ウォーキング率の低さは、おそらく別の現象とも関連がある。安定した恋愛関係にある人々は、他の人間関係への興味が低いのだ。「男女ペアがフォーン・ウォーキングをあまりしていないという観察結果は、人々が安定した恋愛関係にある時に、他の人間関係を無視する明確な例かもしれません」とシャポスニックとアンウィンは述べている。

フォーン・ウォーキングには他の要因も影響しているかもしれない。シャポスニックたちは、人々が自分の携帯電話に精神的に依存するようになった証拠が増えてきていると指摘した。「携帯電話がバッグもしくはポケットに入っている場合と比べて、手に持っていればシンプルに取り扱えます。それが緊張や不安の減少につながると考えられます」。実際、女性のほうがこういった依存を醸成しがちであることが知られており、このことが性別による差の説明になるかもしれない。

もう1つ要因として考えられるのは、セキュリティだ。携帯電話を手に持っていれば、バッグやポケットに入れている時より盗まれにくくなる。また、別の誰かとつながっている可能性があることを示せば、ある種の犯罪者を思いとどまらせることができるかもしれない。シャポスニックとアンウィンは「脅威に対する個人的な安心の確保と、潜在的な加害者に対する視覚的な警告のサインとしての両方の目的で、携帯電話を手に持っていると考えるのはかなり妥当のようです」という。

そして最後に、スマホを社会的・経済的ステータスを誇示する装飾品だとする考えがある。「使っていない時でも観察者に見えるようにモバイルデバイスを持ち歩くことで、人々は自分の社会的地位を示しているのです」。実際は、フォーン・ウォーカーの振る舞いはもっとさりげないものになるかもしれない。特別な人からのメッセージを待っているからロマンティックな誘いには応じられないのよ、といった具合だ。

この興味深い研究は、人間が安心を得る状況を、もっと丁寧に定義しなければならないことを示している。

もちろん、この先にやらなければならないことはたくさんある。パリのようなヨーロッパの大都市にいる人々の習性は、比較的裕福な西洋社会の人々の習性を代表するものとして合理的だろう。しかし、他の国ではスマホが異なる役割を果たすであろうことは想像に難くないし、そこではフォーン・ウォーキングのパターンも異なってくるだろう。

フォーン・ウォーカーに、本当に交際している人がいるかどうかを聞いてみるのも有益かもしれない。フォーン・ウォーキングが恋愛状態を表す社会的な装飾行為の一種になりつつあることだって考えられるのではないだろうか? ある意味において、スマホを持ち歩くことは結婚指輪をはめるのと同じことなのかもしれない。

さらに研究が必要なのは明らかだ。シャポスニックとアンウィンは、その計画をしているだろう。スマホを握りしめてテキストメッセージを待ちながら。

(参照: arxiv.org/abs/1804.08753 : フォーン・ウォーカー:非アクティブなモバイルデバイスへの依存に関する研究)

 

人気の記事ランキング
  1. Wide-scale US wind power could cause significant warming 風力発電に思わぬ副作用、短期的には温暖化を促進か?
エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
Emerging Technology from the arXivは、最新の研究成果とPhysics arXivプリプリントサーバーに掲載されるテクノロジーを取り上げるコーネル大学図書館のサービスです。Physics arXiv Blogの一部として提供されています。 メールアドレス:KentuckyFC@arxivblog.com RSSフィード:Physics arXiv Blog RSS Feed
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月150本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Wide-scale US wind power could cause significant warming 風力発電に思わぬ副作用、短期的には温暖化を促進か?
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る