デジタル経済を独占する
グーグルやフェイスブックと
私たちはどう付き合うべきか
市場を独占し、利益を欲しいままにするインターネット巨大企業のビジネスは、税金で作られたテクノロジーを用い、ユーザーから得た個人情報を売りさばくことで成り立っている。こうした企業の価値がどのように生み出され、どのように測られてきたのか、そこから誰が利益を得るのかを、私たちは知る必要がある。 by Mariana Mazzucato2018.07.07
内燃機関が100年以上にわたって主要な動力源として使われてきたのは、それが最良のエンジンだったからではない。歴史的偶然によって他のものより先に有利な立場を得たからだ。キーボードのQWERTY配列は、タイプライターの機械式アームがぶつかって絡まるトラブルを減らすために、わざと非効率的に設計された。この特性はもはや現在のキーボードには無関係だが、人々はそんなことにはお構いなく、まだQWERTY配列のキーボードを使っている。なぜなら皆がそれに慣れているからだ。
グーグルやフェイスブック、アマゾンが巨大企業でいられる背景にも同じ原則がある。人々がこれらの企業のサービスを使うのは慣れているからだ。グーグルは単なる検索エンジンではない。電子メール(Gメール)でもあるし、ビデオ通話ツール(グーグル・ハングアウト)でもあるし、書類の作成・編集ツール(グーグル・ドキュメント)でもある。これらのサービスは全て、グーグルに忠実であれば利点を最大限に高められるように作られている。Gメール・アドレスを持っていなければグーグル・ハングアウトは使えないといった具合だ。
なぜこれが問題になるのだろうか? こうした巨大企業が、税金で作られたテクノロジーを元に巨額の利益を得ていることがその理由かもしれない。グーグルのアルゴリズムは米国国立科学財団の助成金を使って開発されたものだ。インターネットは国防高等研究計画局(DARPA)の資金を使って作られた。同じことが、タッチスクリーンのディスプレイ、GPS、Siri(シリ)にも当てはまる。巨大テック企業はこうして市場を事実上独占するようになったのだ。他のあらゆる産業では独占を防ぐための規制があるのに、テック企業は同じような規制をうまくかわしている。しかも、彼らのビジネス・モデルは、人々の生活習慣や個人情報を利用することの上に成り立っている。そもそも、彼らの使っているテクノロジーの開発資金を提供したのは納税者だというのに。
擁護派の人々は、こうしたインターネット分野の巨大企業を「世の中のためになる力」として表現することを好む。そして、デジタル・プラットフォーム上でソーシャル・ネットワーク、GPSナビゲーション、健康管理といったあらゆるものをタダで使えるシェアリング・エコノミーを讃える。
しかし、グーグルがくれるものはどれもタダではない。むしろまったく反対だ。人々は、グーグルがまさに欲しがるものを渡しているのだ。グーグルのサービスを使う時には、無償で何かを得ているような気がするかもしれない。だが、あなたはグーグルのお客ですらない。グーグルの販売する商品だ。グーグルが得ている利益の多くは、広告スペースとユーザーのデータを企業に売ることで生まれている。フェイスブックとグーグルのビジネス・モデルは、パーソナル・データを商品化する上に成り立っている。つまり、人々の友情、関心、心情、好みを売り物に変えているのだ。
シェアリング・エコノミーと呼ばれる代物も、同じ発想に基づいている。顧客は旅行代理店などの機関とやり取りをする代わりに、個人間でやり取りをする。この際に企業の果たす役割は、サービスを提供することではなく、売り手(たとえば、車を持っていて、それを運転する気がある人)と買い手(車に乗せてもらう必要がある人)をつなぐことだ。こうしたいわゆる「プラットフォーム」は、物やサービスの生産、共有 …
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