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コネクティビティ Single Photon Carries 10 Bits of Information

単一光子で
10.5ビットの情報を伝送

物理学者は、単一光子で伝送できる情報量の記録を更新した。この実験は、量子暗号ですぐに使える。 by Emerging Technology from the arXiv2016.09.24

単一光子は、各光子が0か1を符号化するため、デジタルで情報を送るのに最適だ。この場合、単一光子が保持できるデータは0か1しかないと思い込みがちだ。しかしそうではない!理論的には、単一光子が符号化できる情報量に限りはないのだ。

ここで興味深い疑問がわいてくる。物理学者は単一光子に情報をどれだけ詰め込めだろうか? 現在のテクノロジーで何ができるのか?

9月23日、人類はトゥウェンテ大学(オランダ)のトリスタン・テントラップ研究員らのチームより、答えを手に入れた。研究チームは単一光子に初めて10ビット以上を詰め込んだのだ。

理論的にいえば、研究チームの方法は単純だ。その手法では、単一光子を文字集合のどれかと関連付ける。文字集合に多くの文字があれば、光子は多くの情報を運ぶ、というだけだ。

理由を理解するのは難しくない。ある文字集合が2進コードのように、たった2つの文字しかなければ、各要素は1ビットの情報を符号化する。1ビットは2文字だけの文字集合の各記号を記述するのに必要な情報量だ。

しかし文字集合の数がもっと大きくなると、各文字をユニークに記述するにはより多くの情報が必要になる。したがって各要素は、その量のデータを符号化していることになる。

実際の情報量は、要素数の2を底とする対数になる。たとえば、10進数のような10個の記号を含む文字集合では、各記号は約3.3ビットを符号化している。英語のアルファベットのような26個の記号を持つ文字集合では、各記号は4.7ビットを符号化する、といった具合だ。

研究チームは9072個の記号がある文字集合を作り、目標を達成した。この場合、各記号は13ビット以上の情報を符号化している。

この文字集合の作り方は単純だ。研究チームは112×81ピクセルのグリッドを設定したのだ。これが9072になる。各ピクセルは文字集合のそれぞれの記号を表す。ある単一光子にこれらの記号の1つを符号化するには、その光子をピクセル格子の該当部分に向けるだけでよい。ある特定のピクセルがある光子の到着を記録するとき、光子はその記号を記録する。

コツがいるのは、正確に単一光子でピクセルを記録するところだ。光子を操る方法は、角度調節できる鏡で、制御可能な特定の方向へ単純に反射させる。しかし研究チームは、もっと自由度の高い装置「空間的光変調器」で、反射するときに光子の波面を修正する。ここでは光子をその目標に向けて操るために、回折効果を利用している。

単一光子の検出も、バナナの皮のようにつまずきの元になりうる。さまよった光が信号をかき乱す可能性があるからだ。研究チームは、そうならないように器用なことをした。単独の光子を作り出す代わりに、光子のペアを作って、そのうちの一方だけにこの操縦技術で情報を符号化するのだ。もう一方の光子を注意して探し出し、最初の光子がもうすぐピクセルに到着することの警報として利用する。

この手法により、最初の光子が到着したまさにその瞬間に、ピクセルのスイッチを入れられる。その結果、さまよう光子が信号をかき乱す機会は劇的に減る。しかしそれでもまだノイズの強い影響があるので、結局、光子は理論的な最大値よりわずかに少ない情報しか運べない。

それでも、この結果はたいしたものだ。研究チームは「われわれは単一光子の高次元符号化が光子あたり10.5ビットに達することを実証しました。光子あたりたった7ビットだった前回の記録を大きく塗り替えています。そして格子のサイズを拡大すれば、もっとずっと多くを符号化できる可能性がすぐに示せます」としている。

この成果はすぐに応用できる。物理学者はすでに量子暗号の鍵配送のような応用に向け、単一光子に符号化された情報を利用している。

現在、情報は0と1の2進数で単一光子に符号化されている。しかし新しい手法によって、すぐに各光子が1桁多い情報を運べるようになる。「この成果のとても前途有望な方向性は、量子鍵配送のための広空間アルファベット(large-spatial-alphabet)符号化の実行です」と研究チームはいう。

この記録破りのテクノロジーが実際に使われるのをわれわれが目にするまで、長くはかからないかもしれない。

参照:http://arxiv.org/abs/1609.04200: 1つの光子で10ビット以上を伝送

エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
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