KADOKAWA Technology Review
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The Mystery of Knotted Proteins

「結び目タンパク質の特性の解明」
ケンブリッジ大学の論文を読んでみた

生物学者は、自然が分子に結び目を作る理由の解明に近づいており、より良い医薬品の発見につながるかもしれない。 by Emerging Technology from the arXiv2016.10.27

タンパク質は、アミノ酸の長い鎖で、すべての生物にとって不可欠な基本的要素だ。鎖は、たとえば、分子が鍵と鍵穴のように一緒に収まるなど、タンパク質の機能に重要な役割を果たす複雑な3次元形状を形成する。

そのため、分子生物学における大きな課題のひとつは、タンパク質がこれらの形状を形成する方法と、どのようにして確実かつ迅速に形成されているかを理解することだ。これをタンパク質の折りたたみ問題だ。

この謎には興味深い伏線がある。分子生物学者は、長年にわたり、タンパク質はかなりもつれることはあるが、通常の状態では結び目を形成できないと主張してきた。なぜなら、この結び目が、タンパク質の構造を固定してしまい、それ以上折りたためなくするからだ。

しかし、21世紀初めから別の見方が登場した。生物学者が、結び目を形成するタンパク質があることを発見したのだ。ここから、この結び目がどうやって形成されるのか、なぜ形成されるのかという、興味深い疑問がわき起こる。

10月26日、ケンブリッジ大学のソフィー・ジャクソン研究員のグループがこの疑問に対する洞察を提供してくれた。研究グループは、結び目を形成するタンパク質の分野を再検証し、未解決のままの主要な疑問に挑んだ。

この研究には、大きな可能性がある。ほどかれたり異常に折りたたまれたりしたタンパク質は毒性がある場合があり、結び目や、なぜ結び目が形成されるかをよりよく理解することは、医学的に重要な意味があるのだ。

結び目は、通常、交差の数と、これらの交差が可能なバリエーションの数で分類されている。単純な三つ葉状の結び目には、3つの交差と1つのバリエーションがあるので、3 1と表記する。より複雑で5つの交差と2つのバージョンがある結び目は、5 1や52と表記され、7つの交差と7つのバージョンがある結び目は71、72、…… 77のように表記される。バリエーションの数は、交差数とともに増加していく。

生物学者は、さまざまな種類の結び目タンパク質を発見している。実際、タンパク質データバンクの約1%が結び目たんぱく質で、少なくとも19のタンパク質が単純な31の三つ葉状を形成している。

これらの結び目タンパク質の中には、ヒトの生化学において重要な役割を果たすものもある。たとえば、ヒトのユビキチンC末端加水分解酵素アイソフォーム1 (UCH-L1) は、52に指定される結び目たんぱく質であり、神経細胞における可溶性タンパク質の中で最大5%までを占めている。

UCH-L1には、この分子の結ばれていないバージョンがパーキンソン病に関与しているではないかという理由だけでも、かなりの研究が焦点を当てている。ある研究では、研究者は光ピンセットを使用し、この分子の異なるバージョン (結び目無し、31、52)を形成し、 いかにしてタンパク質が再度折りたたまれるかを計測した。

結び目の存在により、タンパク質が折りたたまれる速度が大幅に遅くなることが分かった。また、結び目の存在がより複雑なエネルギー地形を作成し、折りたたみ過程において、より広い範囲の中間形状の形成を可能にしていた。しかも、52の結び目の領域が、必要以上に大きくなっていた。

追加形状が正確にどのような役割を果たし、なぜ折りたたみの速度が遅くなることが重要であるのかについては、明らかではない。すべては、将来的に計算し探求されなければならない。しかし、これらの問題はかなり複雑で、現在最強クラスのコンピューターを使っても難しいだろう。そのために、より優れた折りたたみのシミュレーションが、将来の研究にとっての重要な分野になる。

興味深い手がかりの1つは、結び目が起こるのが、酵素が分子に結合する部位に近いタンパク質に多いということだ。つまり、結び目の形状が、鍵と鍵穴の形状の重要な部分を形成していることを示唆している。これが、結び目の存在を説明しているのかもしれない。結び目によって、他の方法では困難なまたは不可能な形状を、タンパク質が形成できるのかもしれない。

研究グループは、最後に、生物学者が結び目をシミュレートする方法の限界に関連する件など、この分野における一連の未解決の課題をリストアップしている。たとえば、シミュレーションにおいて、結び目を形成する過程の重要なステップが欠けているのではないか、ということだ。

もうひとつの課題は、別の結び目の内部に結び目が形成されるなど、より複雑な構造が複合した結び目を形成できるかどうかを理解することだ。重要な利点がこういった種類の構造の中にあることを示す理論的研究もある。

そして、最終的な課題は、たんぱく質の構造を計算的に切ることによって、結び目タンパク質を結び目のないたんぱく質に変ええられるかだ。それは積極的な酵素で簡単に達成できるかもしれない。

タンパク質の折りたたみにおける結び目の役割をより良く理解することは、生化学に重要な意味がある。そして、このような知識を、治療薬を発見し、開発することに役立たせることができる。これが、こういった課題に、学術的な興味以上のものがある理由だ。

参照: arxiv.org/abs/1610.05779:折りたたみ構造の複雑さ:理論と実験を使用した結び目タンパク質の特性の解明

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