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エボラを経験したリベリアが直面する「新型コロナ陰謀論」問題
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How Ebola helped Liberia prepare for covid

エボラを経験したリベリアが直面する「新型コロナ陰謀論」問題

5年前にエボラ出血熱のパンデミックを経験したリベリアは、新型コロナを巡って他国とは異なる問題に直面したという。 by Krithika Varagur2020.08.25

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、わずか5年前にエボラ出血熱で打撃を受けたリベリア共和国(リベリア)にとって、過去10年で2度目のパンデミック(世界的な流行)だ。米国で研鑽を積み、両方の緊急事態に対応したリベリアの保健副大臣でCMO(最高医療責任者)のフランシス・カテーが、組織的に蓄積された知識がどのように引き継がれたのか、またかなりの予防策を講じたにもかかわらず、どのようにウイルスが侵入したのかについて説明した。

なお、このインタビューは、趣旨を明確にするため、要約・編集されている。

◆◆◆

中国で新たな病気が発生したというニュースを耳にした瞬間、リベリアでその病気が発生する可能性があると我々は確信しました。唯一の疑問は、その病気がいつリベリアに来るか、でした。したがって、我々は予防策を講じる必要がありました。

リベリアの新型コロナウイルス感染症による死者数:82人


2020年8月19日時点/出所:世界保健機関(WHO)

リベリアは今年1月、いち早く空港での新型コロナウイルス感染症のスクリーニングを開始した国の1つとなりました。エボラ出血熱の経験から、自国の医療体制が想定ほど強固なものではないという判断があったからです。当時感染者数の多かった国(200人を超える感染者が確認されていた国)からの入国者に対しては、リベリア到着後、予防観察センターで14日間の隔離を強制しました。センターはホテル内に設置し、1日に2回から3回、検査を実施しました。

フランシス・カテー

我々の最初の戦略は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がリベリアに入るのを防ぐことでした。新型コロナウイルスは必ず空港を通じて入ってくると分かっていました。そこで我々は、リスクの高い地域から入国する人を積極的に把握してすぐに隔離できれば、その人が新型コロナウイルスに感染していたとしても、すぐに検体を採取して検査できると考えました。そして、もし検査結果が陽性だったとしても、その人は隔離されているため、大規模な接触者追跡をする必要がありません。

私はリベリアで1999年から2003年に起きた第2次内戦中と、その後ハリケーン・カトリーナが米国を襲った時(2005年)、公衆衛生に従事していました。当時、私はノースカロライナ州アンソン郡の保健衛生官でした。カトリーナがルイジアナ州に上陸したとき、私は支援に当たっていて、災害への準備について多くのことを学びました。

2014年から2015年のリベリアのエボラ出血熱危機の時、私は医療対応・計画を担当する危機管理補佐官を務めていました。新型コロナウイルスの感染者が発生した時、我々はすぐさまエボラ出血熱の経験で学んだ教訓を実践し始めました。手洗いや基本的なソーシャル・ディスタンス(社会的距離)など基本的な予防対策について、人々はエボラ出血熱での経験を忘れていませんでした。ですが、人々が新型コロナウイルスがエボラ出血熱ほど深刻ではないと気づき始めると、人々の間に疑念が生じ始め、そして、デマが広がり始めたのです。

我々が立ち向かっている最大の問題は、新型コロナウイルスは現実ではなく、政府や国際組織が金儲けのためにでっち上げたものという考えです。

我々が立ち向かっている最大の問題は、新型コロナウイルスは現実ではなく、政府や国際組織が金儲けのためにでっち上げたものという考えです。もう1つの問題は、検査が陽性だった人の中でさえも、深刻な症状が見られない場合、自分はウイルスに感染していないと信じる人がいるという事実です。つまり、治療施設にいる人が、親戚や家族に「何の症状も出ていないよ」と伝えれば、人々は新型コロナウイルスは深刻な病気ではないと考えます。新型コロナウイルスとエボラ出血熱の違いは、エボラ出血熱の場合、通常、感染者は自分の体重を支えられなくなるため、検査結果が出る前からその人がエボラ出血熱に感染していると見るだけで分かったことです。エボラ出血熱の感染者を探す際、感染している可能性がある人をすばやく特定するのは非常に簡単でした。新型コロナウイルスについては、基本的にまったく無症状の感染者がいます。「いいですか、単にあなたを治療しているだけというわけではないんですよ。簡単に言えば、我々は、あなたの身内があなたから感染しないよう、あなたを彼らから隔離しているんですよ」といった教育を人々に始めています。

新型コロナウイルスが流行し始めた時、国内に人工呼吸器はたった1台しかありませんでしたが、寄付のおかげで、今は3台あります。幸いなことに、これまでのところ人工呼吸器を使用する状況にいたっていません。当然ですが、それが意味するのは、今までのところリベリアではそれほど深刻な症例がないということです。ですが、その状況は変化する可能性があります。

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