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核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Getty Images
Will fusion power get cheap? Don’t count on it.

核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究

核融合発電は「安定した排出ゼロの電力源」として期待を集め、民間資金調達額は直近1年間で22億ドルに達した。しかし、技術は普及するほど安くなるという前提が核融合には当てはまらない可能性を、新研究が指摘している。 by Casey Crownhart2026.04.30

この記事の3つのポイント
  1. 核融合の経験率は2〜8%と推定され、太陽光や電池より大幅に低い見通し
  2. 大型・高複雑性・カスタマイズ必要性が低コスト化を阻む構造的要因となっている
  3. 推定手法の限界を指摘する声もあり、規制・地政学・生産規模次第で予測は覆り得る
summarized by Claude 3

核融合発電は将来、安定した排出ゼロの電力源となり得る——企業が発電所を建設・稼働させることができれば、の話だが。しかし新たな研究によれば、そのような未来が訪れたとしても、安価にはならないかもしれない。

テクノロジーは一般に、時間の経過とともに低コスト化する。リチウムイオン電池は2013年と比べて現在では約90%安くなっている。しかし歴史的に見ると、このコスト低下の進み方はテクノロジーによって異なる。核融合のコストは、電池や太陽光発電ほど急速には下がらないかもしれない。

まだ実用化されていないテクノロジーのコストを予測するのは難しい。しかし、官民合わせて数十億ドルの資金が投じられている以上、将来のエネルギーミックスとそのコストについて、どのような前提を置いているかを検討する価値はある。

重要な指標の1つが、「経験率(experience rate)」と呼ばれる指標だ。これは、エネルギー技術の導入容量が2倍になるごとにコストが何%低下するかを示すものである。数値が高いほど価格下落が速く、規模拡大による経済的恩恵も大きいことを意味する。

歴史的に見ると、経験率は陸上風力発電が12%、リチウムイオン電池が20%、太陽光モジュールが23%である。一方、コスト低下が比較的遅いエネルギー技術もあり、核分裂はわずか2%にとどまる。

学術誌『ネイチャー・エナジー(Nature Energy)』に掲載された新しい研究は、核融合の経験率を推定することで、将来の価格予測の精度向上を目指した。チームは経験率と相関する可能性のある3つの主要な特性を検討した。ユニット・サイズ、設計の複雑さ、カスタマイズの必要性である。一般に、技術が大型で複雑であるほど、また用途ごとにカスタマイズが多くなるほど、経験率は低くなる。

研究チームは、公的研究機関および民間企業に所属する核融合の専門家にインタビューを実施した。専門家にこれらの特性に基づいて核融合発電所を評価してもらい、その結果をもとに経験率を推定した(なお、この研究は核融合の主要なアプローチのうち、現在最も多くの資金を集めている磁気閉じ込め方式とレーザー慣性閉じ込め方式の2つのみに絞っている。他のアプローチでは、異なるコスト構造となる可能性がある)。

核融合発電所は、熱を利用する他の種類の施設(石炭火力発電所や核分裂発電所など)と同様に、比較的大型になる可能性が高い。カスタマイズの必要性は核分裂発電所より少ないと考えられる。主に規制や安全上の考慮事項が比較的単純になるためだ。ただ、太陽光発電のような技術よりは多くなるだろう。複雑さについては、「核融合が非常に複雑であるという点でほぼ全員が一致していました」と、スイスのETHチューリッヒ(ETH Zurich)のエネルギー・技術政策グループで博士課程に在籍し、本研究の著者の一人であるタン・リンシーは述べる(一部の専門家は、研究者が用意したスケールの範囲を文字通り超えていると答えたという)。

研究者らが提示した核融合の経験率の最終的な数値は2%〜8%の範囲であり、核融合は核分裂よりは速いコスト低下が見込まれるものの、現在普及している多くの一般的なエネルギー技術ほど劇的ではないことを示している。

つまり、核融合炉の建設コストを大幅に下げるには大規模な普及が必要であり、おそらくそれにはかなりの時間がかかる。そのため、核融合発電所が生み出す電力は当面、高価なままになる可能性がある。また、この値は多くのモデル研究が前提としている8%〜20%よりもかなり低い。

「全体として、核融合への現在の投資水準については疑問を呈すべきだと思います」とタンは言う。米国は2024年度に10億ドル超を核融合に投入し、民間セクターの資金調達額も2024年7月から2025年7月の間に22億ドルに達した。「エネルギー・システムの脱炭素化という観点から見たとき、これが本当に公的資金の最適な使い道なのでしょうか?」

一方で、過去の傾向から将来のエネルギー価格を推定する手法は誤解を招く可能性があると指摘する専門家もいる。プリンストン・プラズマ物理学研究所(Princeton Plasma Physics Laboratory)のエゲメン・コレメン教授は、「良い試みですが、私たちがどれほど未知の部分を抱えているのか、謙虚でなければなりません」と話す。

2000年には多くのアナリストが太陽光発電は高価なままだと予測していたが、その後生産が爆発的に拡大し、とりわけ中国の積極的な参入によって価格は急落した。「当時の予測が完全に間違っていたわけではありません。ただ、当時見えていた状況をそのまま未来に外挿していただけなのです」(コレメン教授)。

価格低下の速度は、規制、地政学的要因、人件費などに左右される。「まだ実際に建設していない以上、分からないのです」とコレメン教授は述べている。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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