料理雑誌「クックス・イラストレイティッド(Cook’s Illustrated)」で長期連載されているコラム「何の道具?(What is it?)」では、読者が屋根裏部屋や埃っぽい骨董品店の棚から見つけてきたキッチン・ガジェットの起源を探っている。最近好評だったのは、「アクメ回転式手動肉挽き機(Acme Rotary Mincer)」だ。1935年製のヴィンテージモノで、ステンレスの回転刃が10枚付いており、ハーブや野菜を「電光石火の速さ」で切り刻むと謳っているものの、実際にはそうでもなかった。
クックス・イラストレイティッドのこのコラムは、要するにキッチン・テクノロジー界のお悔やみ欄といえる。追悼の意を示すべき道具に関しては、事欠かないようだ。まあ当然だろう。夕食の用意に苦労してきた人類は、より簡単かつ早く安全に、よりおいしい夕飯を料理する方法を追求してきた。実際、コラムに載せられてしまうガジェットたちは、そられが持つ本来の目的をこなすことに関しては完璧だ。しかし、我々がホームキッチン・テクノロジーに望むことは時代とともに変化し、また、最終的に我々が手にするものも変化していった。
20世紀後半、キッチン・イノベーションの中心にいたのは電子レンジだった。第2次世界大戦中、レーダーのために設計されたテクノロジーの副産物でもある電子レンジは、真に革新的な調理法をもたらした。マグネトロンが極性を数十億回も反転させる磁場を形成し、水と脂質の分子を何度も方向転換させる電磁波を食品に浴びせる。その振動が隣接する分子を加熱させ、スピーディな調理が(ある程度は)実現する。ただ、マイクロ波は食品の奥深くまでは入り込めず、また、均等に食品の表面に触れないため、すばやく熱せられるのは特定の部分だけだ。冷凍ラザニアを電子レンジで解凍して、マグマのように熱いチーズの部分と氷のように冷たいミートソースの部分を交互に頬張った経験がある方ならご存知だろう。電子レンジは速くて便利だが、精密なものではない。
2005年、アマンダ・ヘッサーはニューヨーク・タイムズ紙の記事で、当時は実験的な一流シェフのみが用いていた手法である真空調理法について、「 …
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