寄稿:時代遅れの米銀行秘密法、金融情報の保護には何が必要か?
銀行秘密法(Bank Secrecy Act)は、ニクソン政権の頃に施行された法律で、大規模な金融犯罪の痕跡を捉えるためのものであった。当時のコンピューターの処理能力では、銀行取引の記録といっても決して大きなものではなかったが、現在のコンピューター技術を考えると、銀行とのあらゆるやり取りの記録だけでなく、プラットフォーム企業が有する検索履歴などの個人情報と結びつく恐れがある。 by Katie Haun2025.07.17
- この記事の3つのポイント
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- 米国でデジタル資産規制制定が進む中、金融プライバシー保護の議論が著しく欠落している状況が明らかになった
- 1970年制定の銀行秘密法により令状なしの金融監視が可能となり、デジタル化で全米国人が監視対象となっている
- 最高裁判例の変化を踏まえ、現代の無差別金融監視は憲法修正第4条と根本的に矛盾する課題がある
米国はデジタル資産に関する規制の制定を目前に控え、党派を超えて金融システムの近代化に向けた機運が高まっている。しかし、イノベーションや国際競争力に関する議論が盛り上がる一方で、ある重要な問題が著しく欠落している。それが「金融プライバシー」である。21世紀のデジタルインフラを構築するにあたって、我々は何が技術的に可能かだけでなく、何が社会的に許容されるのかについても議論しなければならない。つまり、ほぼすべての取引を令状なしに追跡可能とする、金融システムに静かに組み込まれた監視権限の拡大と正面から向き合う必要がある。
多くの米国人は、金融監視を権威主義体制と結びつけるかもしれない。だが、ニクソン時代に制定された「銀行秘密法(BSA:Bank Secrecy Act)」と、過去半世紀にわたる金融のデジタル化により、金融プライバシーは米国内においても深刻な脅威にさらされている。大半の米国人は、自身が憲法上の権利を侵害する可能性の高い広範な監視体制の下に生活していることに気づいていない。コーヒー1杯の最小額のベンモ(Venmo:米国で人気のスマホ決済サービス)決済から、高額な医療費の請求まで、あらゆる購入、預金、取引が、たとえ違法行為がなくとも、監視システムのデータポイントとして蓄積されていく。
元連邦検察官として、私は法執行機関が国民の安全を守るために必要な手段を持つべきだと強く考えている。しかし、現状の体制は安全性を高めるものではない。それは偽りの安心感を与える一方で、何百万人もの米国人の憲法上の権利を静かに、そして恒久的に侵食している。
1970年に議会がBSAを制定した当時、現金が取引の主流であり、標的は組織犯罪だった。この法律は、銀行に対して顧客に関する一定の記録を保持し、当局の要請に応じてそれを引き渡すことを義務付ける制度を創設した。これは、いかなる権力抑制や均衡の仕組みも伴わずに行使できる。一方で、捜査令状の取得には、犯罪が行なわれ、かつその犯罪に関連する証拠が捜索対象の場所に存在するという相当な理由を示し、裁判官または判事の発行を受ける必要がある。これに対し、検察官は司法の監督もなく、範囲の制限もなく、政府に一切の負担をかけずに、過去10年分の銀行記録を要求する「召喚状」を発行することができる。負担はすべて銀行側に課される。これに対して、適正な捜査令状は、相当な理由と司法の承認を伴い、対象を限定する必要がある。
1976年の「合衆国対ミラー事件」において、連邦最高裁判所はBSAを合憲とし、市民は銀行のような第三者と共有した情報について「プライバシー保護の正当な期待」を持つことはできないと判断した。ここから「第三者法理」が始まり、法執行機関は令状なしに金融記録へアクセスできるようになった。BSAはこれまでに …
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