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世界のリーダーたちが集うダボス会議で持ちきりだった2つのこと
Theresa Münch | picture-alliance | DPA | AP Images
All anyone wants to talk about at Davos is AI and Donald Trump

世界のリーダーたちが集うダボス会議で持ちきりだった2つのこと

スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラムに、MITテクノロジーレビュー編集長のマット・ホーナンが参加している。ステージではAIが脚光を浴び、廊下ではトランプが話題を席巻する。誰もが語りたがる2つのテーマが支配する会場から、48時間の現地レポートをお届けする。 by Mat Honan2026.01.22

この記事の3つのポイント
  1. 2026年ダボス会議でAIとトランプが最大の関心事となり、テック企業の存在感が圧倒的に高まっている
  2. 大企業のAI活用が実験段階を超え、アラムコは30億〜50億ドルのコスト削減を実現するなど実質的成果が出始めている
  3. トランプ大統領の現地入りを前に政治的緊張が高まり、各国リーダーの対応に注目が集まっている
summarized by Claude 3

スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(通称ダボス会議)からこの原稿をお届けする。現地入りして2日間、会議に出席したり、パネルに登壇したり、とにかく話せそうな人がいれば誰彼構わず声をかけている。しかし、今のところ誰もが話したがるテーマは、AIとトランプの2本立てだ。

ダボスという場所を物理的に表現するなら、公式セッションが開催されるコングレスセンターと、そのすぐ外にあるプロムナード。この通り沿いには、臨時で改装された「ハウス」と呼ばれる拠点がずらりと並ぶ。普段は小売店だが、この期間中は各国政府や企業がスポンサーとなって独自のイベントを繰り広げる。ウクライナ・ハウス、ブラジル・ハウス、サウジ・ハウス、そしてUSAハウス(これについてはまた詳しく書く予定)などがある。メディア系ではCNBCやウォール・ストリート・ジャーナルの「ハウス」もあるし、AIや科学など特定のテーマに特化した拠点も存在する。

とはいえ、2026年の今、プロムナードの主役は何と言ってもテクノロジー企業だ。ある地点でふと周囲を見渡すと、視界に入る「ハウス」がすべてテック企業のものだった。パランティア(Palantir)、ワークデイ(Workday)、インフォシス(Infosys)、クラウドフレア(Cloudflare)、シースリー・エーアイ(C3.ai)などが勢ぞろい。言うまでもないかもしれないが、会場内のステージからパーティ、ネットワーキングの場に至るまで、テクノロジー企業の存在感は圧倒的で、「テクノロジーがいかに世界経済を完全に支配しているか」をいやというほど実感させられる。

もちろん、こうした「ハウス」はイベントや交流の場として機能しているが、真の主戦場はコングレスセンター内だ。私の本格的なダボス体験は、1月20日火曜日の朝のセッションで始まった。そこで私は、アクセンチュア(Accenture)、アラムコ(Aramco)、ロイヤル・フィリップス(Royal Philips)、ビザ(Visa)各社のCEOとともに、AIの組織内活用をテーマにパネルディスカッションを進行した。いずれの企業も、実験段階を越えて、AIの本格導入フェーズに入っている。個人的にも非常に興味深い議論だった。詳細は割愛するが、結論としては、AIをめぐる誇大宣伝論は多々あるものの(本誌の報道も例外ではない)、少なくとも大企業ではすでに実質的なインパクトが生じている、ということだ(セッションの動画はここで視聴できる)。

たとえばアラムコのアミン・ナセルCEOは、業務効率の改善によって30億〜50億ドルものコスト削減を実現したと述べた。フィリップスのロイ・ヤコブスCEOは、カルテの自動作成などにより医療従事者が患者と向き合う時間が増えたと語った(これは私にとって非常に共感できる話だった。私の妻は小児科の看護師で、彼女が日々いかに多くの時間を記録作業に費やしているか、長年聞かされてきたからだ)。そしてVisaのライアン・マキナニーCEOは、同社が推進する「エージェント型コマース」が、消費者や中小企業、さらには国際決済の仕組みにどう影響するかを語った。

この「エージェント型コマース」について、マキナニーCEOはさらに踏み込んだビジョンを描いている。つまり、AIが単に「頼まれたものを買う」段階から進化し、ユーザーの好みや過去の支出傾向をもとに自律的に買い物をするようになる、というものだ。日常の食料品の買い出しからバケーションの手配まで、あらゆる買い物が対象になる可能性がある。もちろん、そこには消費者と店舗双方を保護するための強固な認証と信頼構築が必要だ。だが、2025年に見られた取り組みが「赤ちゃんのよちよち歩き」だったとすれば、2026年はその大きな第一歩が始まる年になるだろう。ちなみに、このセッションの前日にはマスターカードの幹部とも同様の議論をしたばかりだ。

だが、この日のパネルで、私に最も刺さったのはアクセンチュアのジュリー・スウィートCEOの言葉だった。巨大企業だけでなく多様な業界に目を配る彼女がこう言ったのだ。「理解できないものを信頼するのは難しい」。

これは、私たちが今、AIとどう向き合っているかを的確に言い表していると思った。

この思いは、他の参加者たちも同じように抱いているようだった。ダボス会議の公式プログラムが始まる前に、私はAIハウスで開かれたパネルディスカッションにも登壇したが、会場はぎゅうぎゅうの満員。入場待ちの長蛇の列は絶えず、いざ中に入れば、文字通り人混みをかき分けて進む状態だった。誰もが中に入りたがり、誰もがAIについて語りたがっていた。

(ちなみにそのパネルとは、「ミームとディープフェイクの時代における創造性とアイデンティティ」に関するもので、アトランティック誌のニコラス・トンプソンCEOが進行を務めた。アーティストのエミ・クサノ、映画・ゲーム業界でのAIに関する議論の中心的な人物であるSAG-AFTRA(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)の主席交渉官ダンカン・クラブツリー=アイルランドと共演した。長くなるので詳細は割愛するが、実にエネルギーに満ちたセッションだった。興味のある方はぜひご覧いただきたい)。

——で、そう。ため息をつきつつ、ドナルド・トランプの話に戻らねばならない。

米国のトランプ大統領は1月21日の水曜日に現地入り予定だ。グリーンランド占領の脅しや、NATOを恒久的に破綻させるのではとの懸念もくすぶる中での登場である。ステージ上ではAIが脚光を浴びている一方、トランプは廊下や控室の会話を席巻している。軽口や神経質な笑い、あからさまな怒り、そして目に見える恐怖さえ入り混じる、異様な空気が漂っている。

こうした空気は、徐々に舞台裏から表舞台にも漏れ始めている。私が火曜日のパネルを終え、メインホールを出て別のパビリオンへ向かう途中、階段を下りてくる人物に小さな取り巻きが付き添っていた。その一団が突如、スマホとカメラに取り囲まれたのだ。

少し前にも同じ場所で、報道陣がデビッド・ベッカムに群がって質問を浴びせていたので、今回も別の有名人かと思った。なにしろ、ダボスは業界の大物だらけだ。ついさっきも、コーヒーバーでエリック・シュミットと列を共有したばかりだ。ダボスは本当に奇妙な場所である。

だが今回は、カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムだった。いまや彼は、トランプ大統領への民主党側の対抗馬として注目される存在であり、次期大統領候補の最有力とも目されている。サンフランシスコ在住の私としては、彼が市長になる前の市議時代から何度も顔を合わせてきたが、今回のダボス会議での彼ほど興奮し、気合いが入った姿はなかなか見たことがない。

中でも印象的だったのは、彼がトランプを「ジャングルの掟、ドンの支配に従うナルシスト」と呼び、ティラノサウルスに例えて「やつと付き合うか、食われるかだ」と言い放ったこと。そして世界のリーダーたち(その多くがダボスに集結中)を「哀れだ」と批判し、「彼らのためにニーパッド(膝当て)を持ってくるべきだった」とまで言った。

……なんというか、すごい発言だ。

もう少し穏やかな表現ではあったが、カナダ首相マーク・カーニーの演説でも、似たような危機感がにじんでいた。私は彼のスピーチを聞き逃したが、会場では話題騒然だった。「もし自分たちがテーブルにつかなければ、メニューに載せられてしまう」という彼の一言が、特に印象的だったらしい。

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マット・ホーナン [Mat Honan]米国版 編集長
MITテクノロジーレビューのグローバル編集長。前職のバズフィード・ニュースでは責任編集者を務め、テクノロジー取材班を立ち上げた。同チームはジョージ・ポルク賞、リビングストン賞、ピューリッツァー賞を受賞している。バズフィード以前は、ワイアード誌のコラムニスト/上級ライターとして、20年以上にわたってテック業界を取材してきた。
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