ハンチントン病の根治を目指すRNA新薬、治験で効果を確認
合成RNAの鎖が、脳内で非可逆的な損傷を起こすタンパク質の生成を遅らせる効果があることが人間での治験で示された。
遺伝子の突然変異が原因のハンチントン病は、ハンチントンと呼ばれる異常タンパク質が体内で作り出されることによって引き起こされる。この変質したタンパク質は、脳のいくつかの部位に損傷を与える。「アイオニスHTT Rx(IONIS-HTT Rx)」と呼ばれる新しい医薬品は、このタンパク質の生成を阻止する合成RNAの鎖である。大きな針を使って脊椎のあたりの体液に注入する。
アイオニスHTT Rxを開発したアイオニス・ファーマシューティカルズ(Ionis Pharmaceuticals)は、46人の患者に対する第1フェーズの治験で、この医薬品により神経系の中の毒性のあるタンパク質の値をうまく下げられることが示されたと発表している。この結果が大手製薬会社の目に留まった。ロシュ(Roche)がアイオニスHTT Rxのライセンスを4500万ドルでアイオニスから取得し、さらなる開発を引き受けると公表したのである。
アイオニスHTT Rxの臨床試験を実施したユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのサラ・タブリジ教授(臨床神経学)は、治験結果は「ハンチントン病の患者とその家族にとって画期的な重要性を持ちます」と声明で述べた。ロシュは現在、タンパク質の数値の減少が病気そのものの進行に有意義な影響を与えるのかどうかを調べるために、さらなる治験の実施を予定している。
今回の治験結果は、RNA医薬品がうまく機能することを示す初めてのものではない(「脊髄性筋萎縮症のゼロ歳児がRNA治療薬で『奇跡』級の復活」および「Gene-Silencing Drugs Finally Show Promise」を参照)。しかし、ハンチントン病の根本的な原因に狙いを定めた初めての医薬品である。
ガーディアン紙によると、同じ手法に変更を加えることで、アルツハイマー病やパーキンソン病といった他の不治の脳疾患に適用できるかもしれないと考えている研究者もいるという。
5Gから6Gへ、通信の世界的研究者・太田 香教授「U35」へのメッセージ
世界の工学者を魅了し続ける
eムック最新号「安全保障2.0 見えない脅威への備え」
壁を突破する「覚悟」——再生医療産業を開拓、畠 賢一郎氏に聞く
書評:サム・アルトマンはいかにして「AI帝国」を築いたか