期待外れのCRISPR治療、包括的承認で普及目指す新興企業
「今世紀最大のブレークスルー」と呼ばれてきたCRISPRだが、承認された遺伝子編集薬はわずか1種類、治療を受けたのは約40人にとどまっている。米新興企業のオーロラ・セラピューティクスは「薬の99%以上は同じまま」でわずかに調整し、複数の変異に対応する治療法を開発。包括的承認で打開を目指す。 by Antonio Regalado2026.01.29
- この記事の3つのポイント
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- オーロラ・セラピューティクスが単一の遺伝子エディターで複数のPKU変異を修正する包括的治療法を開発中
- CRISPR技術は承認薬1種類・治療患者40人にとどまり、期待されたほどの革命的影響を実現できていない
- 7000種類の遺伝性疾患患者4億人への治療拡大には規制枠組みと商業化モデルの変革が必要になる
MITテクノロジーレビューは、2013年から遺伝子編集技術CRISPR(クリスパー)について取り上げ、「今世紀最大の生物工学のブレークスルー」と呼んできた。しかし現在までに承認された遺伝子編集薬はわずか1種類しかなく、実際に商業的に使用されたのは約40人の患者のみで、全員が鎌状赤血球症の患者である。
CRISPRの影響は、当初期待されたほど大きくないことが次第に明らかになってきた。実際、この分野全体に失望の空気が漂っており、一部のジャーナリストは遺伝子編集革命が「魔力を失った」と述べている。
では、CRISPRがより多くの人を救うためには何が必要なのだろうか。あるスタートアップ企業は、その答えは治療法の試験と商業化に向けた「包括的アプローチ」にあると考えている。オーロラ・セラピューティクス(Aurora Therapeutics)は、メンロ・ベンチャーズ(Menlo Ventures)から1600万ドルの資金を調達し、CRISPRの共同発明者であるカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授を顧問に迎えている。同社は、わずかに調整または個別化可能な遺伝子編集薬について、新たな高額の試験や承認を都度必要とせずに承認を得ることを目指している。
遺伝子編集治療に関する規制の見直しは、2025年11月に表明された。米国食品医薬品局(FDA)のマーティン・マカリー長官が、従来の手法では試験が難しい「オーダーメイドの個別化治療法」のために「新たな審査経路」を開設すると発表したのだ。
オーロラ・セラピューティクスが最初に取り組む標的は、フェニルケトン尿症(PKU)と呼ばれる希少な遺伝性疾患であり、まさにこの「包括的アプローチ」の好例である。PKU患者は、アミノ酸フェニルアラニン(肉やたんぱく質に広く含まれる)を別のアミノ酸であるチロシンに変換するために必要な酵素が先天的に欠損している。フェニルアラニンが蓄積すると脳に損傷を与えるため、患者は通常、特別な栄養補助飲料と野菜中心の厳しい「生涯にわたる食事療法」を続けなければならない。
理論上、遺伝子編集によってPKUを治療することは可能だ。実際、マウスの実験では、科学者たちは肝細胞内のDNAを改変することで酵素の遺伝子を修復することに成功している。肝細胞はこの酵素を生成する細胞であり、遺伝子編集薬が最も到達 …
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