フラッシュ2022年9月26日
BA.5株は実効再生産数が1.4倍、ワクチンに抵抗性=東大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学医科学研究所が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の懸念される変異株(VOC:variant of concern)の1つである「オミクロンBA.5株」のウイルス学的特徴を、流行動態、免疫抵抗性、および実験動物への病原性等の観点から明らかにした。
同コンソーシアムは、統計モデリング解析により、オミクロンBA.5株は、オミクロンBA.2株と比較してヒト集団内における実効再生産数が1.4倍高いことを発見。また、BA.5株は、BA.2株や他の亜系統株と比べて感染や3回のワクチン接種によって誘導される中和抗体により抵抗性を示すこと、BA.2株とBA.5株では抗原性(抗原となる物質が抗体を特異的に認識して結合する性質)が異なることを明らかにした。
さらに、オミクロンBA.5株のスパイクタンパク質の合胞体(感染した細胞が、スパイクタンパク質を細胞表面に発現し、周囲の細胞と融合して形成される大きな細胞塊)の形成活性はオミクロンBA.2株に比べて有意に高いことや、BA.5株のスパイクタンパク質を持つウイルスはBA.2株に比べて病原性が高いことをハムスターを用いた実験で突き止めた。
2021年末に南アフリカで出現したオミクロン株は、当初オミクロンBA.1株が全世界に伝播したが、その後BA.2株へと置き換わり、現在、BA.5株への置き換わりが国内外で急速に進んでいる。国内ではBA.5株の加速的な流行拡大による医療逼迫が起こっており、有効な感染対策を講じることが求められている。
今回の研究結果は、米国科学雑誌のセル(Cell)オンライン版に2022年9月13日付けで掲載された。
(中條)
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