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ロボットが胚を作り
AIが精子を選ぶ——
IVF新時代がやってきた
Photo Illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty
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What’s next for IVF

ロボットが胚を作り
AIが精子を選ぶ——
IVF新時代がやってきた

世界初のIVFベビーが誕生して48年。技術は進歩してきたが、IVFはいまだ完璧ではない。成功率は近年低下傾向にあり、着床の仕組みさえ十分に解明されていない。しかし今、AIとロボット、スクリーニング技術によって新時代の扉が開きつつある。 by Jessica Hamzelou2026.05.11

この記事の3つのポイント
  1. IVF技術はAI・ロボット・遺伝子検査により着床率改善とアクセス向上を目指す新段階に入りつつある
  2. 胚の子宮内膜への直接注入装置や精子選別AIなど、選別・移植の精度を高める技術が臨床段階に進んでいる
  3. 遺伝子編集による疾患予防は技術的・倫理的課題が多く、優生学への転用リスクも含め規制の枠組みが問われている
summarized by Claude 3

およそ48年前、ルイーズ・ジョイ・ブラウンは体外受精(IVF)によって誕生した世界初の人物となった。それ以来、何百万人ものIVFベビーが誕生している。こうした広がりは、IVFをより安全で効果的にしてきた技術の進歩に支えられている。

しかし、IVFはいまだ完璧ではない。そのプロセスは時間がかかり、苦痛を伴い、費用も高い。そしてそれは、そもそもIVFを受けられる幸運な人々にとっての話だ。さらに少なくとも一つの指標によれば、IVFの成功率は近年低下傾向にある。

生殖は極めて複雑であり、胚培養士や婦人科医がいまだ解明できず、制御できない要素が多い。例えば、健康に見える多くの胚がなぜ子宮に着床しないのかは不明である。患者が妊娠できない理由を説明できない場合もある。また、個人間や不妊治療クリニック間でIVF成功率に大きな差が生じる理由も、常に説明できるわけではない。

科学者たちはこうした問題すべてに加え、さらに多くの課題に取り組んでいる。同時に、新たな遺伝子ツールが胚の解析や改変にどのように用いられるのかという複雑な倫理問題とも向き合っている。一方で、治療の標準化、ヒューマンエラーの排除、成功率の向上、そしてIVFのアクセス向上を目指す技術は、すでに生殖補助医療の新時代をもたらしつつある。人工知能(AI)とロボットに支えられた時代である。

1. 胚の着床を促進する

こうした技術の一部は、スペイン・バレンシアにあるカルロス・シモン財団(Carlos Simon Foundation)で開発されている。3月に訪問した際、研究者たちはラボを案内し、ヒトの子宮を体外で生存させ続けることに初めて成功した装置を見せてくれた。

チームの一部は、将来的に胎児を正期産まで育てられる人工子宮の構築を夢見ているが、まずはこの装置を用いて着床(受精卵が子宮内膜に接触し、内部に侵入し、いわば「孵化」して妊娠開始を引き起こす瞬間)の理解を深めることを目指している。

IVFは数十年にわたり進歩してきたにもかかわらず、このプロセスはいまだ十分に理解されていない。健康に見える胚であっても、着床率は40〜60%にとどまる。

現在のIVF技術では、クリニックは初期段階の胚を作製し、子宮が最も受容性が高いと判断されるタイミングまで待つことができるが、胚を子宮内に移植した後は、胚は自力で着床するしかない。カルロス・シモン財団の上席臨床科学者ハビエル・サンタマリアと同僚たちは、別のアプローチを試みている。彼らはボタンを押すだけで胚を子宮内膜に注入できる装置を開発した。

プロトタイプを用いたデモンストレーションでは、サンタマリアは腟鏡を手に取り、「患者」の腟口に向き直った。この場合の「患者」は実際の人間ではなく、大陰唇、腟、子宮、卵巣を備えたプラスチック製モデルであり、本来なら脚が固定される脚置きの代わりに短い突起が2本付いているだけであった。

彼は前かがみになって内部をのぞき込み、「胚を」と声をかけた。すると同僚で胚培養士のマリア・パルドが、シャーレから採取したばかりのマウス胚を入れた細い針を手渡した。

サンタマリアの装置では、この胚を収めた針を送達チューブに接続できる。このチューブにはカメラ、照明、そして針が子宮内膜に到達したことを知らせるセンサーが備わっている。チューブを子宮内に挿入すると、婦人科医は内部を可視化しながら内膜へと正確に誘導できる。

「すべての準備が整えば、ボタンを押すだけです」とサンタマリアはフットペダルで装置を作動させながら説明し、胚が注入された。「入りました」

チームはこの装置の臨床試験を開始したばかりで、これまでに10人未満の女性が処置を受けたが、妊娠には至っていない。しかし財団のカルロス・シモン理事は楽観的だ。IVFの発明者たちもルイーズ・ブラウンが誕生するまでに160回以上のサイクルを実施しなければならなかったと指摘する(1969年から1978年にかけて、そのチームは250人を対象に457サイクルを実施し、生児誕生はわずか2例だった)。「試験は継続中です」と彼は言う。

2. 「最良の」卵子・精子・胚の選別

IVFにおける長年の課題の一つは選別だ。一方のパートナーから10個の卵子を採取し、もう一方から見た …

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