フラッシュ2022年12月14日
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極低温の量子流体中に現れる長距離力を発見=新潟大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]新潟大学とドイツ・ハイデルベルク大学などの国際共同研究チームは、極低温の量子流体中に浮かべられた粒子間に働く長距離力の存在を理論的に示し、長距離力は超流動体中に生じる音波の量子揺らぎにより引き起こされることを発見した。
研究チームは、2008年に南部陽一郎博士のノーベル賞受賞対象となった「南部理論」を応用することで、超流動フォノン(超流動体中の音波)と不純物の長距離でのふるまいを有効的に記述する理論を一般に書き下せることに注目。従来の理論解析では量子揺らぎに起因する力が考慮されていないこと、さらに不純物間のポテンシャルへの量子揺らぎの寄与を効率的に計算できることを明らかにした。そして、この計算を実行することにより、長距離ではファンデルワールス力と呼ばれる分子間力と同じ力が働くことを理論的に示した。
レーザー技術によって絶対零度近く(数十ナノケルビン程度)まで冷却された原子集団は、量子状態を高精度に制御可能な系として近年注目されており、ミクロな世界における力を調べる上でも格好の舞台となっている。超流動体中において長距離で働く新しい力の発見は、極低温の量子流体中に置かれた複数の不純物の挙動を理論的に記述するための基盤を与える結果として期待できる。
研究成果は、米国の科学雑誌フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)オンライン版に2022年11月30日付けで掲載された。
(中條)
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