フラッシュ2023年6月18日
-
光で制御する再生可能な接着剤、水中での接着作業も可=NIMS
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、接着と剥離を何度でも繰り返すことができ、必要な時には基材と接着剤を元の状態にリセットできる、再生可能な接着剤を開発した。
研究チームは、波長の異なる紫外線を照射することで架橋・脱架橋反応を可逆的に引き起こすカフェ酸に注目。カフェ酸を組み込んだ高分子を基材に塗布したのちに、波長365ナノメートル(nm、10-9メートル)の紫外線を当てて、架橋反応によって不溶化した塗膜を作成した。
同チームによると、この塗膜は室温で保存している状態では接着性を示さないが、加熱することで接着と剥離を何度でも繰り返せる。さらに、波長254nmの紫外線を照射することで、架橋した部分が開裂し、塗布前と同じ状態にリセットされるので、接着剤と基板の両方を回収、再利用できる。カフェ酸の化学構造に含まれるカテコール基は、付着生物であるムラサキイガイが分泌する接着成分にも多く含まれており、フッ素樹脂や水中での接着など、一般的な接着剤が苦手とする基材や使用環境においても、強力な接着力とリサイクル性を発揮するという。
環境への配慮と経済成長の両立への意識の高まりの中、複数部材からなる成形加工品を原材料に分離・回収する技術が求められている。その中で、使用時には十分な接着力を発揮し、役目が終わると容易に剥離できる新たな接着方法が注目されている。研究論文は、アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials)に2023年6月13日付けで掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- China wants to restore the sea with high-tech marine ranches 海に浮かぶ巨大施設、 中国が進める スマート海洋牧場の野望
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
- Trajectory of U35 Innovators: Masaki Nakada 仲田真輝:人工生命起業家が「魚の養殖」にピボットした理由
- Why EVs are (mostly) set for solid growth this year バブル崩壊も騒がれたEV市場、2025年はどうなる?
- IU35 Japan Summit 2024: Hiroshi Ito 「深層予測学習でロボットとAIのギャップを埋める」伊藤 洋