フラッシュ2023年7月27日
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自然界で未発見のタンパク質トポロジーを解明=ExCELLSなど
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]自然科学研究機構 生命創成探究センター(ExCELLS)や理化学研究所、名古屋大学の研究者らによる研究チームは、自然が見い出していない未踏の折り畳み可能なタンパク質αβ型トポロジーが、現在自然界で発見されているトポロジー約400個よりも遥かに多く、少なくとも約1万個存在していることを世界で初めて理論と実験両方を用いて明らかにした。
αβ型トポロジーは、βシートとαヘリックスからなるαβ型タンパク質において、αヘリックスやβストランドの2次構造要素の配置とその連結方法を表したもので、最近では新しいトポロジーが発見されることは非常に稀であることが知られている。タンパク質が折り畳み可能なトポロジーは、自然によってほぼ探索され尽くされたのかどうかについて、これまで理論的な考察がされてきたが、実験的な検証はされていなかった。
研究チームはまず、物理化学とタンパク質構造データに基づいて、タンパク質分子が折り畳み可能なトポロジーを理論的に見分けるルールを考案。次に、これらのルールを用いて、現在のタンパク質構造データバンクに存在しないが折り畳み可能と考えられる4-8本のβストランドからなるβシートを持つ新規αβ型トポロジー(合計1万2356個)を予測した。
さらに、これらのうち4本ストランドからなるβシートを持ち、結び目を形成するトポロジーを含む新規トポロジー8種類全てについて、独自の「タンパク質分子をゼロからデザインする技術」に基づいて、これらのトポロジーのタンパク質を計算機でデザイン。実験で調べたところ、これら全てのトポロジーのデザインについて、計算機でデザインした通りの構造に折り畳んでいることが判明した。
研究チームによると、この結果は、約1万個もの未踏の折り畳み可能なαβ型トポロジーが存在することを示しており、多くの折り畳み可能なトポロジーが自然に探索されず存在していると考えられるという。タンパク質分子はその立体構造に基づいて機能を発現することから、新規トポロジーを持つタンパク質分子をデザインすることで、医療や産業に貢献する新規機能性タンパク質の創出に繋がると期待される。
研究論文は。ネイチャー・ストラクチュアル・アンド・モレキュラー・バイオロジー(Nature Structural and Molecular Biologyに2023年7月3日付けで掲載された。
(中條)
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