フラッシュ2023年8月26日
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気候変動/エネルギー
核融合炉の保護被膜を剥がれにくく=東工大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学、横浜国立大学、核融合科学研究所の研究グループは、核融合炉の構造材料を液体金属の冷却材から保護するα-Al2O3(アルファアルミナ)被膜の成長と、基材への付着を促進する仕組みを解明した。核融合炉では伝熱性に優れる液体金属が冷却剤として有望とされているが、高温の液体金属は構造材料を腐食させるため、構造材料の表面に緻密な保護性酸化皮膜を形成させて腐食を抑制する手法が検討されている。
研究グループは先行研究で、液体金属冷媒が構造材料を腐食させる原因が、液体帰属と接した材料からの金属成分の溶出や、液体金属と鉄鋼材料の合金化であることを明らかにしており、構造材料の表面に緻密な保護性酸化被膜を形成させることで、液体金属による腐食を大きく抑制できることを確認している。
今回の研究では、酸化物分散強化型(Oxide Dispersion Strengthened:ODS)のFeCrAl合金が、緻密なα-Al2O3被膜を形成することに着目し、その被膜が成長する様子を調べた。その結果、ODS FeCrAl合金が含有するチタン(Ti)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)などの活性元素の酸化物粒子が被膜に移動して細長い酸化物を形成し、酸素だけが通れるトンネルのような役割を果たすことで被膜の成長を促して、保護性能を高めていることを見出した。
さらに、ODS FeCrAl合金で形成したα-Al2O3被膜を、尖った針で引っかいて剥がす際に必要な力を測定する試験を実施し、強い力でも剥がれないことを確認。活性元素の細長い酸化物が、テントを固定する杭(ペグ)のように被膜の組織をがっちりと捕まえることで、付着強度を高めていることが分かったという。
α-Al2O3被膜と基材の間にはギザギザな界面が形成されており、被膜が厚くなるに従って深くなっていくこと、界面が深くなるほど被膜を剥離させるために必要なせん断応力が大きくなり、被膜の付着強度が強くなることも分かった。溶液を使って酸化物などの膜を成膜する手法に比べて、付着力が高く、高密度な液体金属の流れにも十分耐えられるという。
研究成果は7月6日、サーフェス・アンド・コーティングス・テクノロジー(Surface and Coatings Technology)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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