フラッシュ2023年11月21日
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生物工学/医療
T細胞性急性リンパ性白血病の増殖因子を発見=京大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学医生物学研究所などの共同研究チームは、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)細胞が骨髄内に留まり増殖する分子メカニズムを明らかにした。今回の成果は、同白血病に対する新しい治療法開発の手がかりとなるものであり、今後の研究が期待される。
研究チームは今回、遺伝子発現の制御に関わるクロマチンリモデリング(DNA2本鎖が巻き付いた形態の集合であるクロマチンの構造転換)を促す因子の一つである「cBAF複合体」が、白血病細胞の増殖に重要な役割を担っていることを発見。cBAF複合体は、クロマチンリモデリング活性により、がん原性転写因子である「RUNX1」の標的遺伝子への結合を促進しており、白血病細胞の増殖に対し正に関与していることを明らかにした。
さらに、cBAF複合体のクロマチンリモデリング活性を阻害する薬剤は、RUNX1のゲノムDNAからの乖離と増殖抑制を誘導することを発見。白血病マウスモデルにおいても増殖抑制効果を示すことを確認した。
急性白血病と呼ばれる血液腫瘍のうち、成人では約5%、小児では約10-15%がT細胞性急性リンパ性白血病に分類される。治療成績は比較的良好で約80%の長期生存率が得られているが、治療が奏功しない患者もおり、既存の方法とは異なる全く新しい治療法の開発が求められている。
研究論文は、国際学術誌ブラッド(Blood)に2023年11月3日付けでオンライン掲載された。
(中條)
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