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先送りされてきた「核のゴミ」問題、ブームの今こそ向き合え
James Brooks/AP Photo
It’s time to make a plan for nuclear waste

先送りされてきた「核のゴミ」問題、ブームの今こそ向き合え

大規模データセンターの電力需要が増大し続ける中で、原子力発電への関心が急速に高まっている。だが、先送りされてきた放射性廃棄物の処理問題は未解決のままだ。資金や関心を振り向ける時期に来ている。 by Casey Crownhart2026.05.08

この記事の3つのポイント
  1. 米国では原子炉が年2000トンの高レベル廃棄物を生むが、70年経た今も恒久的な処分場が存在しない
  2. フィンランドが深地層処分場の稼働直前にある一方、米国のユッカマウンテン計画は政治的対立で約10年停滞している
  3. テック企業の原子力投資が急増する今こそ、専門組織の設立と処分場建設推進に資金と政治的意志を振り向けるべき時だ
summarized by Claude 3

現在、米国では核エネルギーが政治的立場を超えて支持される、稀な局面を迎えている。大規模データセンターの需要を満たすために奔走するテック企業の関心が、原子力業界に資金と注目の再興をもたらしているのだ。こうした新たな関心が高まっているからこそ、今こそ古くからの問題について語るべき時だ。それが、核廃棄物である。

米国だけでも、原子炉は年間約2000トンの高レベル放射性廃棄物を生み出している。そして、それらを保管する場所がない。

近年改めて注目されているとはいえ、米国の核エネルギープログラム自体は決して新しいものではない。米国は世界のどの国よりも多くの原子炉と発電能力を有している。にもかかわらず、米国初の恒久的な核施設が稼働してから約70年が経った今も、核廃棄物の長期的な解決策は存在しない。

使用済み燃料は主に、稼働中および停止中の原子炉の敷地内で、鋼鉄とコンクリート製のプールや専用容器に保管されている。専門家の間では、これらの方法は安全だという見解がおおむね一致しているが、恒久的な保管を想定した設計ではない。

この高レベル放射性廃棄物の長期保管に向けた世界的な主流戦略は、深地層処分場への収容だ。穴を掘り、放射性物質をその中に入れ、コンクリートで埋める。地下数百メートルに設けられるこれらの施設は、恒久的な保管場所として設計されている。

使用済み燃料を対象とした地層処分場はまだ稼働していないが、いくつかの国は着実に前進している。最も進んでいるのはフィンランドで、2026年時点で施設の試験運用をしている。最終承認は近く下りる見込みで、2026年後半にも操業が開始される可能性がある。他のいくつかの国もそれほど遅れをとっていない。

フランスには50基以上の原子炉があり、電力網における原子力の発電比率は世界最高水準だ。使用済み燃料の再処理プログラムとしても世界で最も実績がある。この再処理によってプルトニウムとウランを分離し、混合酸化物(MOX)燃料と呼ばれる燃料を製造する。ただし、再処理は完全なリサイクル・ループではないため、このプロセスから生じる残留物にも保管場所が必要だ。現在、廃棄物はラ・アーグ再処理工場の敷地内に保管されているが、フランスは処分場の建設を計画している。今後10年以内に初期承認が下り、2035年までにパイロット操業が開始される可能性がある。

技術的には、米国にも使用済み燃料の行き先がある。ネバダ州のユッカマウンテンだ。連邦政府の土地に位置するこのサイトは、1987年に議会によって指定された。しかし、政治的な反対により進捗は完全に停滞している。2011年に連邦政府はこの施設への資金提供を停止し、10年以上にわたって目立った動きは何もない。

その間も、廃棄物は積み上がり続けている。

原子力産業は世界規模で新たな段階に突入しつつある。中国は世界最速のペースで成長する原子力エネルギー・プログラムを擁しており、バングラデシュやトルコを含む複数の国が初の原子炉を建設中だ。

長い歴史を持つ米国のプログラムも成長を見せている。原子力エネルギーへの関心と承認は急上昇しており、大手テック企業は増大する電力需要を満たすために資金を投じている。各社は次世代原子炉を提案し(規制当局の承認を受け始めてもいる)、それらは異なる冷却材、燃料、設計を採用している。

こうした新たな関心の高まりと、新種の核廃棄物の到来が迫っている今、原子力企業とその有力な顧客企業は、地層処分場の建設推進に向けて働きかけるべき時だ。地球上で最も裕福な国であり、次世代原子炉に関する活動の大きな割合を占める米国は、後れをとり続けるのではなく、先進国の仲間入りを目指すべきだ。

最近の資金と関心の急増のうち、ごくわずかでも廃棄物問題の進展に振り向ければ、状況は変わりうる。一部の専門家は、核廃棄物の管理をエネルギー省に委ねるのではなく、米国に新たな専門組織を設立するよう求めている。この組織は、フィンランド、カナダ、フランスのプログラムを手本にするものだ。

核廃棄物の恒久的な解決策を計画し、建設し、稼働させるまでのプロセスは長い。フィンランドは1980年代に計画を開始し、2000年代初頭にサイトを選定して、今ようやく廃棄物の受け入れ開始に近づいている。恒久的な保管ソリューションが整っていない国にとって、着手すべき最善のタイミングは数十年前だった。しかし、次善のタイミングは今だ。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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