フラッシュ2023年11月24日
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気候変動/エネルギー
東工大、中低温域で高いプロトン伝導性を示す新物質
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学の研究チームは、従来とは全く異なる材料設計戦略により、中低温域で世界最高のプロトン(H+、水素イオン)伝導度(プロトンが伝導することによる電気伝導度)を示す新物質を発見。結晶構造解析と理論計算から、新物質の高プロトン伝導度の要因を明らかにした。低温域で高性能なプロトン伝導性燃料電池(PCFC)などの開発につながることが期待される。
研究チームは今回、三次元的に不規則化した本質的な酸素空孔を持つペロブスカイトにドナー・ドーピングをするという、従来の戦略とは全く異なる材料設計戦略により、中低温域で高プロトン伝導度を示す新物質「BaSc0.8Mo0.2O2.8」を発見した。ドナー・ドーピングとは、ホスト化合物に含まれる陽イオンよりも、価数の高い陽イオン(ドナー)をドーピングすることである。
同チームはさらに、中性子回折データを用いた結晶構造解析と第一原理分子動力学シミュレーションにより、この物質の高いプロトン伝導度の要因を解明。(1)プロトン・トラッピング(アクセプターがプロトンを引き付ける現象)の軽減による低い活性化エネルギー、(2)高いSc(スカンジウム)濃度、(3)高いプロトン濃度、(4)三次元のプロトン拡散にあることを明らかにした。
燃料電池として現在実用化されている固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、動作温度が高いため、中低温域(50~500℃)で高いプロトン伝導度を示す材料を用いたプロトン伝導性燃料電池の開発が期待されている。
今回発見した新物質を電解質に用いることで、中低温域で高性能なプロトンセラミック燃料電池を作製可能になり、高価な白金が必要なくなるとともに、耐熱材料が不要となり、燃料電池の製造コストを大幅に下げられる可能性がある。研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、2023年11月17日付けでに掲載された。
(中條)
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