フラッシュ2023年12月12日
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生物工学/医療
動物細胞上の病原体の動きを機械学習で自動追跡=東北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学と国立感染症研究所の研究グループは、動物細胞に付着した病原体の動きを蛍光マーカーなしで自動的に追跡する手法を開発した。感染症を引き起こす微生物が動物細胞内でどのように動くのかを追跡する実験は、病気の仕組みの解明に役立つが、蛍光物質が微生物の生理機能を阻害することがあるため、蛍光マーカーを使える微生物種は限られている。
研究グループは機械学習を利用した「背景減算法」という手法を微生物の動画の解析に取り入れ、蛍光マーカーで標識していない微生物の運動を培養細胞上で追跡することに成功した。背景減算法は、監視カメラの映像解析で、静止している背景に対して動いている前景を自動的に追跡する目的で利用されている。
研究グループは人獣共通感染症であるレプトスピラ症の病原体であるレプトスピラ属細菌(Leptospira interrogans)の腎臓細胞上での動きを背景減算法を利用して解析した。具体的にはラット(保菌動物)と犬(重症化傾向のある動物)の腎臓細胞に、レプトスピラ属細菌のさまざまな臨床分離株を感染させ、腎臓細胞に付着しながら這い回るように動くクロウリング運動を、機械学習を利用した背景減算法で解析した。
その結果、保菌動物であるラットの腎臓細胞に感染したレプトスピラ株の多くは細胞にはよく付着するが、クロウリング運動はあまり活発ではなく、重症化しやすい犬の腎臓細胞に感染したレプトスピラ株は、細胞にはあまり付着しないが、クロウリング運動が活発であることが分かった。さらに、LigAとLenAというレプトスピラ属細菌の外膜タンパク質の遺伝子が破壊された変異株は、いずれも犬の腎臓細胞に付着する確率が著しく低下したことから、これらのタンパク質が腎臓細胞への付着に関わる可能性が高まった。
研究成果は12月5日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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