フラッシュ2024年1月25日
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生物工学/医療
成人T細胞性白血病に新治療戦略、PD-L1発現メカニズムを解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]北海道大学、長崎大学、京都大学、米国フォックス・チェイスがんセンターの研究グループは、成人T細胞性白血病/リンパ腫で見られる免疫チェックポイント分子「PD-L1」の発現メカニズムを明らかにした。この発見は、従来の治療に反応しづらい成人T細胞性白血病/リンパ腫に対する新しい免疫療法の開発への道を開くものである。
研究チームは、CRISPR-Cas9技術を利用して、成人T細胞性白血病/リンパ腫細胞から1万9114種類の遺伝子を網羅的にノックアウトし、PD-L1の高発現と低発現細胞を分離した。その後、分離した細胞のDNAを分析し、PD-L1発現に重要な遺伝子を特定した。
その結果、転写因子STAT3がPD-L1の発現を促進すること、またNEDD化に関わる遺伝子がその発現を抑制することが判明した。JAK阻害薬ルキソリチニブを用いてSTAT3の活性を抑えると、PD-L1の発現が減少した。一方で、NEDD化関連分子の阻害薬ペボネディスタットを加えると、PD-L1の発現が増加し、この細胞は抗PD-L1抗体や抗PD-L1 CAR-T細胞療法による攻撃を受けやすくなることが分かった。
これらの発見から、PD-L1発現を操作することで、成人T細胞性白血病/リンパ腫の治療法を改善できる可能性が示された。具体的には、STAT3を抑制してPD-L1の発現を下げることで、がん細胞に対する免疫応答を強化する方法や、ペボネディスタットを使用してPD-L1の発現を一時的に増加させた後に免疫療法を施す方法が有効であることが示唆された。
この研究成果は、2023年12月24日に「ブラッド(Blood)」誌に掲載された。
(笹田)
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