KADOKAWA Technology Review
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CO2を完全に回収、アラム・サイクル方式の実験発電所が稼働
Net Power
A game-changing carbon-capture power plant just passed its first big test

CO2を完全に回収、アラム・サイクル方式の実験発電所が稼働

ネット・パワー(NET Power)は5月30日に、二酸化炭素回収のための革新的手法を採用したヒューストン近郊のパイロット・プラントを無事に稼働させたと発表した。温室効果ガスの排出を膨大なコストをかけず効果的に削減する方法として有望視されている同プラントは、最初の重要な試験に合格した。

パイロット・プラントは50メガワットの天然ガス発電所で、二酸化炭素自体を使って発電する。すなわち、二酸化炭素を高温と高圧によって「作動流体」に変換して、特別に設計された発電タービンを回す。 余剰な二酸化炭素ガスは工程の中で取り出して、いつでも出荷・販売できる。

今回の「火入れ」により、基盤技術(従来型の蒸気サイクルに置き換わる「アラム・サイクル」と呼ばれる技術)が基本的に検証され、アラム・サイクルの理論が現実世界で機能することが示された。しかし、ネット・パワーは、確かな性能測定指標をまだ1つも出しておらず、発電所が商業規模で経済的に運用できることを今後実証していく必要がある。

今に至るまで、発電所から排出する二酸化炭素を回収するシステムを追加することは複雑かつ高価で、電力の生産コストをつり上げる原因となっていた。ネット・パワーは、商業規模の発電所をいくつか建設した暁には、標準的な天然ガス発電所よりもコストを抑えられると考えている。

すなわち、ネット・パワーのテクノロジーを使えば、安価かつクリーンでフレキシブルな電力源として、標準的な太陽光発電や風力発電より容易に需要に応じた発電量増減が可能な電力を送電網に供給できるということだ。エネルギー研究に携わる人々が1億4000万ドルの実証実験用発電所の動向を注意深く見守っているのは、このような明るい展望ゆえだ。MITテクノロジーレビューがネットパワーの発電所を2018年版ブレークスルー・テクノロジー10に掲載したのも同じ理由による。

ネット・パワーは次の段階として、自社のテクノロジーをライセンス化する予定だ。すでに提携先候補や顧客との交渉に入っており、早ければ2021年にも300メガワットの商用発電所の稼働を開始する見込みである。

ジェームス・テンプル [James Temple] 2018.06.02, 8:55
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