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太平洋の小さな島国、世界初の「法定暗号通貨」を計画
Associated Press
A tiny Pacific island nation is about to issue its own cryptocurrency

太平洋の小さな島国、世界初の「法定暗号通貨」を計画

マーシャル諸島共和国が、独自の暗号通貨を発行するという物議を醸す計画を推し進めている。同国政府によると、この通貨は米ドルに並ぶ自国法定通貨になるとう。

ヒルダ・ハイネ大統領(上の写真)のデビッド・ポール最高顧問がコインデスク(CoinDesk)に寄せた記事によると、計画への強い懐疑論があるにもかかわらず、同政府は依然としてこの「マーシャリーズ・ソブリン(SOV:Marshallese sovereign)」と呼ぶ通貨の発行を予定している。今年6月に発表された、デジタル通貨システムを維持する非営利団体「SOV開発基金(SOV Development Fund)」の設立に続くものだ。

世界各国の政府はいま、独自の暗号通貨を発行すべきかどうかという問題に取り組んでいる。ベネズエラはすでに暗号通貨「Petro(ペテロ)」の発行を試みているが、いまだ軌道に乗っていない。マーシャル諸島共和国の政府関係者は、実際に通用する最初の暗号通貨を発行できると考えているようだ。

2018年3月、マーシャル諸島共和国議会がデジタル通貨プロジェクトを立ち上げる法案を可決したタイミングでは、同国が切実に必要としている歳入増加の機会があった。当時は、多額の資金を調達する手段としての新規暗号通貨公開(ICO)の全盛期であり、多数の企業が独自のデジタル通貨を開発するだけで、定期的に何億ドルもの大金を稼いでいたからだ。

だが、ポール最高顧問や他のデジタル通貨の支持者は、世界の金融システムにより多くアクセスできる手段になるという他のメリットも見出していた。2018年9月、ポール最高顧問はブルームバーグに対し、近年の米国によるマネーロンダリングを取り締まる規制によりコンプライアンス費用が増加し、国際銀行にとってマーシャル諸島のような国とのビジネスは、より収益性が低く、よりリスクの高いものになったと述べた。「一瞬で海外送金ができ、改ざんのリスクの低い完全に安全な通貨を発行することで(中略)、マーシャル諸島は最終的に独自の条件で世界の金融システムに思い通りにアクセスできるようになります」とポール最高顧問は書いている。利用者は海外送金に銀行を必要としなくなるため、その考えには少なくともある程度の妥当性がある(一方で、受取人はその通貨を受取先の国で使用できる通貨に交換する必要がある)。

2018年11月、ハイネ大統領の政敵はこの問題の是非を問う不信任投票を仕掛けたが、大統領は辛うじて勝利した。激しい反動は海外からもきている。米国財務省はマーシャル諸島のデジタル通貨計画に関して「深刻な懸念」があると述べた。国際通貨基金(IMF)は昨年9月に発表した報告書で、マーシャル諸島のデジタル通貨の発行による潜在的な収入益より、経済的、「風評被害」、マネーロンダリングなどのリスクによるコストのほうが上回る可能性があると警告した。

一方で、ポール最高顧問は、このプラットホームはマネーロンダリング防止を目的とした規制遵守に伴う費用を減らせると主張する。ブロックチェーンを利用することで「コンプライアンスのほとんどを自動化できます」という。また、通貨供給量は「事前に定められ、改ざんできない」ため、政府は操作できないとしている。一方で、その他の多くの情報は明らかになっていない。9月上旬にシンガポールで開催される会議で、ポール最高顧問がさらなる情報を提供することが期待されている。

マイク オルカット [Mike Orcutt] 2019.09.13, 6:54
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