CRISPRの農業利用に暗雲、EUが遺伝子編集作物の規制で初判断
欧州連合(EU)の欧州司法裁判所は、クリスパー(CRISPR)のような遺伝子編集技術で改変された作物も、従来のGMO(遺伝子組換え作物)を管理する厳格な規制の対象とすべきだとの決定を下した。
ルクセンブルクにある欧州司法裁判所は、遺伝子編集を含む 「突然変異誘発」によって作られた作物は他の種の遺伝子を含むGMOと同じ規制を適用されるべきだとの判決を下した。「これはつまり、すべての新発明は(中略)EUの長期に渡る認可プロセスを経なければならない、ということです」とオランダのワーゲニンゲン大学の専門家、カイ・ファーンハーゲン准教授はネイチャー誌に語っている。
科学者とバイオ業界は、クリスパー(CRISPR)のような遺伝子編集技術は安全性を担保するために厳しく規制される必要は無いと主張してきた。クリスパーによる改変で生み出された作物は従来の品種改良で生まれた作物と同じだという主張だ(クリスパーの方が改良速度はずっと早いが)。
今回の司法判断は、欧州における食物研究開発にとって大きな痛手となる。クリスパーなどの新技術への商業的関心が失われる可能性があると同時に、新しい作物の国際的な取引にも影響する可能性がある。「EUのGMO指令下に遺伝子編集済み生体が分類されると、クリスパーという革命的技術への扉が閉ざされる可能性があります」と、英国の作物科学研究所であるロザムステッド試験場(Rothamsted Research)のジョナサン・ネーピアはBBCに語っている。
米国の科学者たちはそれぞれ独自に研究を進めている。遺伝子編集済みの大豆やその他の作物が、厳しい安全性試験を経ることなく市場へと送りこまれている(米国での議論の詳細は2017年秋の記事「遺伝子組換えから「編集」へデザイナー作物は農業の未来を変えるのか?」を参照。eムックにも詳しくまとめている)。
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