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課金体系の変更で露呈した、パトロンサイトの理想と現実
Kaizen Nguyễn | Unsplash
Patreon Artists Are Struggling to Achieve a Living Wage

課金体系の変更で露呈した、パトロンサイトの理想と現実

パトレオン(Patreon)とアーティストたちの間に、少し問題が起こっている。パトレオンは、クリエイターがファンから直接、何度でも寄付を受けられるように設計されたプラットホームだ。アーティストが、より確実な収入を得られることで、作品に専念する自由を得られることを狙いとしている。

しかし、12月7日にパトレオンは、今までアーティストが受けた寄付総額から支払われていた利用手数料を、12月18日以降は支援者が支払う形式に変更すると発表した。支援者は寄付金額に加え、寄付額の2.9%と一律の35セントを利用手数料として支払う。

一見すると、クリエイターにとっては取引手数料を支払う必要がなくなるので、よいことのように思える。しかし、アーティストたちは、5ドル以下の寄付をしてくれる人たちを失うのではないかと恐れている。パトレオンはこういった心配に対して、ブログで次のように述べた。「支援者が、いつ課金されるのか、いくら課金されるのか、心配する必要のないシステムにしたいと考えています。これはパトレオンがすべてのユーザーにとってよりよいシステムへと進歩していくための最初の一歩なのです」。

だが、パトレオンの統計情報を伝えるグラフトレオン(Graphtreon)がまとめたデータでは、すでにクリエイターが支援者を1人も失わずに金銭を得ることに必死であることを示唆している。パトレオンのクリエイターのうち、パトレオンの収入で生計を立てているのは2%程度にすぎない。年間15万ドル以上の収入があるサクセス・ストーリーはあるものの、よりありふれているのは、生計を立てるために奮闘している旅行写真家のブレント・ネッパーのようなパターンだ。

「パトレオンを始めてからも、何カ月も仕事を探し続けましたが、パトレオンは仕事のない期間を支えてくれました。そこで、私はパトレオンに専念するようになったのです」とネッパーはオンラインメディアであるアウトライン(The Outline)の記事で語った。「わずかな収入のためにやるべきことはたくさんありましたが、私は決意を持って取り組みました。120ドルだったパトレオンでの月収は1年後に増えましたが、それでも163ドルでした」。

ほとんどのクリエイターは、パトレオンでの収入で暮らすことなど考えもしない。せいぜいが、広告売上、商品売上、スポンサーからの後援といった、生活していくために必要な収入に上乗せできる副収入といったところだ。つまり、パトレオンというWebサイトは、アーティストの経済的苦境を最終的に解決してくれるものではない。しかし、パトレオンは、どんなに少額であれ、毎月当てにできる収入が見込める。最近、こうした目的のために、パトレオンは誰でも自分のWebサイトを有料化できるツールを立ち上げた。

エリン・ウィニック [Erin Winick] 2017.12.11, 17:34
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