MIT、エプスタイン寄付金問題の詳細を公表
マサチューセッツ工科大学(MIT)とジェフリー・エプスタイン被告との関連についてまとめたMITの報告書は、性犯罪で有罪判決を受けるという不祥事を起こした資産家のエプスタイン被告から寄付金を受ける便宜を図ったとして、3人の副理事長、セス・ロイド教授(物理学)、メディアラボの伊藤穰一元所長らを含む多数の大学幹部教職員の名を公表した。
エプスタイン被告が、2008年に未成年の少女を買春目的で確保した容疑で有罪判決を受けた後、2012年にはロイド教授がエプスタイン被告から受け取った10万ドルの寄付金について、大学側への報告を「意図的に怠った」ことが調査で判明した。これを受け、MITはロイド教授を有給休職に処している。また 、2019年にはこのスキャンダルが公表されたことを受け、伊藤元所長が辞任している。
調査結果では、未成年の性的人身売買の罪で刑務所に収監され、2019年8月に獄中で死亡したエプスタイン被告が、2002年から2017年の間、MITに約85万ドルを寄付していたことが明らかになっている。これは、問題となった寄付金についてのニュースが初めて報道された後に報告された、80万ドルを上回る金額となっている。グレゴリー・モーガン副理事長、ジェフリー・ニュートン副理事長、イスラエル・ルイズ副理事長の3人は、いずれもエプスタイン被告からの寄付を知っており、2013年以降それを承認していた。モーガン副理事長とニュートン副理事長は、スキャンダルが発覚する前に退任しており、2019年12月にはルイズ副理事長がこの学期末をもって退任すると MITが発表している。
ロイド教授は、エプスタイン被告が有罪判決を受ける前の2005年頃に同被告から受け取った6万ドルの個人的な資金についても、報告を怠っていたことが明らかになった。ロイド教授は、その後2012年にも5万ドルの寄付を2回受け取っている。これについて報告書は、エプスタイン被告がロイド教授に「引っかかるかどうか確認するために、5万ドルを2回に分けて提供するつもりだ」との手紙を書いていることから、エプスタイン被告は自身が有罪判決を受けた後も、MITが寄付金を受け取る意志があるかどうか試していたと主張している。ロイド教授からのコメントは得られていない。
MITに対する最初の批判は、2019年の夏にエプスタイン被告から寄付金を受けとっていたことだ。当初、批判の矛先はメディアラボと当時の伊藤所長に向けられており、伊藤元所長はメディアラボがエプスタイン被告から 52万5千ドルの寄付金を受け取っていたことと、伊藤元所長の個人的な投資事業に対し120万ドルの資金提供を受けていたことを謝罪し、その後辞任している。
さらに、メディアラボ以外のMITの幹部職員が、エプスタイン被告からの寄付について知っており、匿名を条件にそれらを承認していたことが今回の報告書で確認されている。今回の騒動をきっかけに、資金調達の倫理に関して幅広い議論が行なわれたほか、MITの性差別的な文化についても学内から声が上がった。70人以上の女性教員が同性教員への一層の支援を求める書簡に署名している。
MITはすでに、寄付金を受け入れる過程を審査する2つの委員会を設置しており、メディアラボの新しい所長を探している。また、MITは性的虐待の被害者に85万ドルを寄付すると発表している。