米FRBがリアルタイム決済の開発を発表、大手銀からは不満も
米国の中央銀行が独自のリアルタイム決済システムを構築する計画に対して、大手商業銀行は大きな不満を示している。
米連邦準備制度理事会(FRB)が、24時間365日のリアルタイムでの銀行間決済を可能とするシステム「フェドナウ(FedNow)」を構築すると発表した。現行ステムは週末には稼働しないため、決済に数日かかることもある。
自前の決済システムをつくるのか、それとも商業銀行に任せるのか? 結論を下すのにFRBは長い時間を費やした。2017年に導入されたリアルタイム決済プラットフォームにすでに10億ドルを費やしている商業銀行は、FRBが自前のシステムを作らないとの前提でシステムを構築したという。公的部門の競争相手が決済市場で優位に立つのではないかと心配しているのだ。
だが大手銀行のサービス「クリアリングハウス(Clearing House)」は、小規模銀行に浸透していない。「フェドナウは、規模に関係なくすべての銀行が利用できます」。8月5日、プロジェクト発表のスピーチの中でFRBのラエル・ブレイナード理事はそう語った。「全国1万以上の銀行との長期に渡るサービスの関係性を考えると、FRBはこのような成果を出す独自の立場にいるのです」
なぜ重要なのか? 日々のギリギリの生活費で暮らす人々は、現行システムよりも少しでも早くお金を必要とすることが多い。当座貸越手数料や給与日ローン、小切手の現金化などのサービスに米国人が毎年数百億ドルを費やしている理由の1つがそこにある。リアルタイム決済があれば、それらの支出を抑えられるだろう。そのような技術はすでに実現しており、リアルタイム決済システムは世界の多くの国で稼働している(ベンモ(Venmo)やペイパル(PayPal)といった米国のサービスは既存の決済インフラに依存している)。
中国の大手テック企業であるアリババやテンセントはすでにリアルタイム決済システムを運営しており、人気を集めている。米国では、フェイスブックがデジタル通貨を基盤とする予定の「リブラ」というシステムを計画している。「フェイスブックのリブラプロジェクトは多くの懸念を呼んでおり、検証や対処には時間がかかります。しかし1つ確かなことがあります。全米の消費者や企業はリアルタイム決済を望んでおり、また期待もしています。規模に関係なく、彼らが信用している銀行がそのようなサービスを安全に提供できるようにすべきです」とブレイナード理事は5日に語った。しかし、時間はしばらくかかりそうだ。FRBは2023年から2024年に新システム立ち上げを目論んでいる。