米政府、離散した移民親子の調査にDNA検査を実施
米メキシコ国境で移民の親と子どもが隔離されて拘束されている問題で、米国保健福祉省(HHS)は、両親と離散した不法入国の子どもたち3000人について、DNA鑑定によって両親との再会の手助けをしているという。しかし、実際に誰が検査を実施しているのかは明かそうとしない。
HHSには、「5歳以下の外国人の未成年を両親に引き合わせよ」との命令が連邦地方裁判所から出されている。HHSは、DNA鑑定なら速やかにそれを実行できると主張している。
移民が有料のDNA鑑定を受けて、米国内の誰かとのつながりを証明することはよくある。しかし、今回のような大人数の調査に遺伝子検査が使われたことはなかった。
子どものDNA鑑定には、親や保護者の同意が必要だ。しかし、子どもの親が分からない状態では、どのようにその同意を得ればよいのかはっきりしない。オハイオ州の鑑定会社であるDNA診断センター(DNA Diagnostics Center)のマイケル・ベアード最高科学責任者(CSO)は、「誰が自分の親かを言葉で伝えられない場合、DNAは優れた調査方法です」と述べる。「しかし5歳未満の子どもや、たとえ5歳以上であっても、合法的に鑑定に同意できるかどうかは分かりません」。しかしながら連邦法では、HHSが保護している付添人のいない子どもはHHSの責任下にあり、養護施設に預けて医療上の決定を行なうことができるとしている。DNA鑑定もこれに含まれる可能性がある。
識別試験では、縦列型反復配列(STR)と呼ばれる数十の遺伝子マーカーを調べる。いわゆる父親論争の際に用いられるのと同じもので、警察も使用している。STRには健康に関する情報は含まれていない。移民の鑑定結果は後に廃棄する、と政府は述べている。
HSSによれば、親だと主張していた何人かは実際にはそうではなく、DNA鑑定を受けるように要請された際にそのことを認めた者も数人いたという。7月10日、HSSはすでに34人の親が犯歴調査では問題がなく、DNA鑑定で子どもとの関係を証明したと公表した。
HHSは、誰がDNA鑑定を実施しているかについては口をつぐんでいる。鑑定結果自体はほぼ確実なものと言えるが、サンプルの管理プロセスでは間違いが起こりうる。取り違えがあれば、実際には親子なのに、親子関係がないという間違った鑑定にもつながりかねない。