「ほぼ消えた」はずの強力な温室効果ガス、過去最高を記録
二酸化炭素よりも地球温暖化への影響が1万2400倍も高い有害なガスの排出量が、これまでよりも増えていることが分かった。
HFC-23(トリフルオロメタン、フロン23)は、2017年にインドと中国が排出量をほぼゼロに削減したと報告した後、ほぼ完全に除去されたと考えられてきた。だが、1月21日付けのネイチャー ・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌に掲載された論文によれば、実際には2018年には石炭火力発電所およそ50カ所の年間CO2排出量に相当する過去最高の1万5900トンが排出されていた。
HFC-23は冷蔵庫や空調装置の製造に使用されるほか、開発途上国の冷却システムで使われる別の化学物質HCFC-22(クロロジフルオロメタン)の生産過程において大気中に放出される。
英国ブリストル大学の研究チームは、2007年から2018年に国際的な共同研究組織であるAGAGE(Advanced Global Atmospheric Gases Experiment)の5つの観測所でとらえた観測データを用いた。
論文を執筆した研究チームは排出源を特定していないが、環境犯罪を監視する非政府組織「環境調査エージェンシー(EIA:Environmental Investigation Agency)」は、HCFC-22の生産能力の68%を保有している中国が主な排出源となっている可能性が高いと指摘した。HCFC-22は1987年に採択されたモントリオール議定書により、世界中で段階的に削減されつつある。
今回の論文からは、温室効果ガスの排出に関する国際的な協定の効力を上げるため、独立した監視と検証が必要だと言えそうだ。