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仏教や儒教に学べ、IEEEがAI倫理に関するガイドラインを作成中 What Can AI Experts Learn from Buddhism? A New Approach to Machine Learning Ethics Aims to Find Out

仏教や儒教に学べ、IEEEがAI倫理に関するガイドラインを作成中

人工知能(AI)の急速な進歩に伴って、AIの研究において倫理的な配慮を優先させるようにエンジニアやプログラマーたちに促す新しいイニチアチブがたくさん生み出されている。しかし、それらはほとんどすべてが、裕福な西洋の国々に源を発したものだ。

米国に本部を持つ巨大な電気工学・電子工学技術の学会であるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)が提案するAI倫理への取り組みが、この状況を変えようとしている。この取り組みは、世界規模の多言語でのコラボレーションになるという。

過去2年間だけを見ても、AIにおける倫理を探究する数多くの新しい取り組みが始動している。イーロン・マスクが創立した非営利団体「オープンAI(OpenAI)」、企業同盟である「人々と社会のための人工知能開発パートナーシップ」、カーネギーメロン大学のAI倫理研究所、グーグルの子会社であるディープマインド(DeepMind)の「倫理と社会」研究ユニットなどが挙げられる。

しかし、これらのプロジェクトのほとんどは米国か英国に拠点を置いており、研究者の小さな集団が主導して、英語で書かれた文書だけを更新している。これでは、先進国ばかりがAIの恩恵を受けることになり、人類すべてがその恩恵に預かることはかなわないだろう。

2016年以来、「人工知能および自律システムの倫理的配慮に関するIEEEグローバル・イニシアティブ」と呼ばれるグループが、「倫理に配慮されたデザイン(Ethically Aligned Design)」と呼ばれる文書を執筆してきた。この文書はチャットボットや家庭用ロボットのようなテクノロジーについて、社会と政策に推奨するガイドラインを提示するものだ。同グループは2017年12月上旬、東アジア、ラテンアメリカ、中東、他地域の人びとからのフィードバックを統合した同文書の改訂版を発表した。

同グループの国際的メンバーは、倫理的に配慮されたデザインの文書が自分たちの国で広く流通するように、部分的に自身の母国語へと翻訳したり、自身の地域におけるAI倫理の状態に関する報告書を同イニシアチブの実行委員に提出したりしている(日本における同イニシアティブ・ワークショップのWebサイト)。

倫理的に配慮されたデザインに組み込まれる観点をさらに多様化するために、同イニシアチブは仏教や儒教などの非西洋の価値体系を同一視する「古典倫理」委員会を作成した。これらの価値体系もまた、同グループの倫理的ガイドラインに組み込まれるかもしれない。同グループはまた「AI4All」のような支援団体にも声をかけてフィードバックを求めた。AI4Allは、女性や白人種以外の人種の人々にAIについて教えている。

同イニシアチブがこれらの異なる伝統や観点をどのように融合するのかは、まだ明らかではない。倫理的に配慮されたデザインの最終版は2019年に出版される予定だ。しかし、同グループはいくらか予備的なアイデアを持っている。たとえば、孤立して存在するものはないという仏教の教えを引用することは、AIの設計者たちに自身が作り出すシステムの責任を負っていることを思い出させるかもしれない。同様に、サハラ砂漠以南に位置する地域の哲学的伝統であり、コミュニティの重要性を強調する「他者への思いやり(ウブンツ、Ubuntu)」を開発者に教えることは、開発者が倫理学者とターゲット層の両方と密接に協力して、ユーザーのニーズが特定され、満たされているかどうかを確かめるきっかけになるかもしれない。

熱心な取り組みにもかかわらず、この目論見が結果を生み出す保証はない。準備中の他のAI倫理ガイドラインと同じように、倫理的に配慮されたデザインは推奨するだけであり、強制することはできない。しかし、設計者が多様性を考慮しないとAIがユーザーを差別し得るという意識の広がりや、説明責任に対する消費者の要求の高まりは、AIのための倫理原則を形成する際に世界規模で考えることの重要性を指し示している。

エリザベス ウォイキ [Elizabeth Woyke] 2017.12.19, 6:15
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