KADOKAWA Technology Review
×
Hydroelectric Power Isn’t as Green as We Thought

水力発電所も
温室効果ガスの排出源だった

ダムを作ってもムダだったとは。水力発電所は、想像ほど環境に優しくないと判明しました。 by Jamie Condliffe2016.09.30

ダムを建設して水から電力を作ることは、考えるまでもなく再生可能エネルギーに思える。だが、ダム建設の結果生まれる貯水池は、想像するよりも気候への悪影響がありそうだ。

来週発行予定の論文誌バイオサイエンス誌に掲載されるワシントン州立大学の研究によると、ダムによって形成された貯水池は、単位面積当たりのメタンガス排出量が想像以上に多い。サイエンス誌によれば、液体の水から放出されるメタンガスは、二酸化炭素のように水から放散するのではなく、気体が泡として水面に出てくるため、他の気体より測定が難しい。

しかし、メタンの気泡を測定する新手法により、ワシントン州立大学のチームがより正確な放出速度を計算した。その結果、貯水池は以前に考えられていたより25%も多くメタンを排出することが判明した。25%ならそれほど多くはなさそうだが、温室効果ガスとしてのメタンは、二酸化炭素より約30倍も強力であることと合わせると、少量であっても大きな影響があるとわかる。

The Hoover Dam in Nevada.
フーバー・ダム(ネバダ州)

一方、世界では、水力発電所を新設が相次いでいる。昨年発行の論文誌『アクアティック・サイエンス』掲載の論文によると、今後10年から20年に3700カ所もの水力発電ダムが稼動開始し、世界中で700ギガワット 以上(米国全土に建設された総発電量の約70%)が追加供給される見込みだ。

もちろん、水力発電所による温室効果ガスの増加は、化石燃料で発電するよりはマシだ。しかし、今後数十年にわたるダムの建設ラッシュは、もともと想定していた温室効果ガスの排出量に大きな影響を及ぼすだろう。ダム作ってもムダだったとは。

(関連記事:Science, Aquatic Sciences, “What Do You Do When a Gold Mine Runs Out? Turn It into a Power Plant”)

人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
タグ
クレジット Photo courtesy of Cleber Mori | Flickr
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る