KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
インターネットのあの美しき理想はどこへ消えたのか?
ニュース 無料会員限定
The four ways that ex-internet idealists explain where it all went wrong

インターネットのあの美しき理想はどこへ消えたのか?

21世紀初頭にインターネットに関する議論の2大勢力の1つであった楽観主義は、最近ではすっかり影を潜めてしまった。インターネットはどこで道を誤ったのか、今後どう克服すべきか。「意気消沈した元インターネット楽観主義者」の4つの派閥の主張を紹介しよう。 by Tim Hwang2018.09.11

遠い昔、古き悪しき2000年代、インターネットに関する議論は楽観主義者と悲観主義者の2大勢力が支配していた。

「本来インターネットは民主的なものだ。インターネットによって個人や自己組織化する共同体が力を持ち、瀕死の状態にある支配体制に対抗できるようになる」と楽観主義者は主張した。

「それは間違っている!」と叫んだのは悲観主義者だ。「インターネットは監視とコントロールを助長する。政府や巨大企業が力を得るだけで、手に負えない破壊的な群衆をしばしば勢いづけるだけだ」。

この手の議論は延々と続き、結論が出ることはなかった。

しかしながら、2016年の一連の出来事によって、ついに楽観主義者のコンセンサスは完全に打ち砕かれてしまった。嫌がらせに対して無力であることに始まり、匿名性の中に正体を隠す荒らしの若者やロシアのスパイの存在に至るまで、長きにわたって懸念されてきたインターネットの問題が米大統領選挙によって浮き彫りにされたのだ。インターネットの支持者でさえ、政治的偏向の強まりや誤情報の蔓延といった数々の問題の根源はインターネットにあるという見立てを(それが正しいかどうかは別として)暗に受け入れているようだ。

こうした流れの中で、「意気消沈した元インターネット楽観主義者(Depressed Former Internet Optimist:DFIO)」という新しいタイプが勃興している。テクノロジー産業の有力者による公式の謝罪からカンファレンス会場での非公式な雑談に至るまで、どこを見回しても昔ながらのインターネット楽観主義者を見つけるのは非常に困難になりつつある。いま残っているのは、「撤退した楽観主義者」「疑念を抱く楽観主義者」「両面作戦を採る楽観主義者」だけだ。

ユーリ・スレスキーンが著書『House of Government(政府の家)』で見事に指摘しているように、キリスト教の各宗派からロシア革命のエリートに至るまで、古今東西何かを信奉する人々は、自分たちのビジョンが予想に反して実現しなかった場合に同じようなことをしてきた。予言通りに物事が運ばなかった理由を説明するための理論の展開を余儀なくされ、より良きものの実現可能性を信じて信念を貫くことを正当化する必要があったのだ。

DFIOの間では、なぜインターネットは間違った方向に向かってしまったのか、それをどう克服すべきかについて、それぞれ独自の視点を持ったさまざまな派閥が生まれている。 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る