KADOKAWA Technology Review
×
遺伝子編集ベビー:中国人研究者が申請書に書いた実験の「根拠」
ニュース 無料会員限定
Rogue Chinese CRISPR scientist cited US report as his green light

遺伝子編集ベビー:中国人研究者が申請書に書いた実験の「根拠」

世界初の遺伝子編集ベビーを誕生させたと主張している中国の研究者が実験の正当性を示す根拠としたのは、全米アカデミーズの専門家たちが出したある報告書だった。 by Antonio Regalado2018.12.03

遺伝子編集ベビーを認めるか否か、判断する権限を持つのは誰だろうか?

賀建奎(フー・ジェンクイ)准教授は、研究室で受精卵を使って、遺伝子編集ツールであるクリスパー(CRISPR)によりDNAを改変した赤ん坊を生み出す試みに初めて成功したと主張している。2017年3月のフー准教授の文書は、倫理的問題をはらんだ今回の事案の発端となったものである。

賀教授は現在、倫理規則に違反した疑いで、中国の複数の組織による取り調べを受けている。

しかし、研究計画書(上に画像を掲載)で賀教授は、万事問題はないだろうと述べて審査委員たちを安心させていた。賀教授は、審査委員会に対して、全米アカデミーズ(米国の学術機関)がちょうど1カ月前の2017年2月に、深刻な疾患を治療する目的でのヒト胚の編集を「初めて」認可したと伝えたのだ。

全米アカデミーズは規制を担当する機関や政府機関ではないし、特定の実験を認可・禁止することもない。また、同じ年に全米アカデミーズが出した遺伝子編集についての長大な報告書では、改変内容が次世代に遺伝しうるゲノム編集は「ヒトにおいて試される時期には達していない」と警告されている。それにも関わらず、フー准教授は研究計画書に先述のような内容を記していた。

フー准教授にとって重要だったのは、全米アカデミーズの報告書の最終的な結論だ。警告の文章を数多く含んでいた一方で、この報告書のメッセージは明確だった。この報告書は、一部の人々が当時望んでいたような、CRISPRベビーの作成を一定期間禁止するとい …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る